コラム・インタビュー

神さまの力を借りるには

貴船神社

 曽祖父が伊勢神宮の宮大工だったので、子供の頃から神棚は身近な存在といえばそうでした。ですが、神さまって本当にいるんだなと思ったのはここ15年くらいのことです。ルーツがあるのに三重に行ったことがなかった父親と母親を連れて伊勢にお参りして以来、お礼参りだけでなく伊勢以外の神社にも行く機会が増えていきました。

 ある年、娘が大好きな二つのバンドが京都で2マンライブをすることになり、ふと思い立って連れて行ったことがありました。京都は中学の修学旅行で怖いと思って以来行きたくない場所だったはずなのに、なぜそんなことになったのか自分でも不思議です。娘は伏見稲荷にだけはどうしても行ってみたいということで、ライブの次の日にお山に登ることにしたんですが…。

 体力のまったくないはずの娘がすいすい階段を上り、楽しい楽しいとキャッキャしていて何かがおかしい。これはもしや、と思いおもかる石を上げさせると「すごく軽いよ?」念には念を入れておみくじを引かせると「一番・大大吉」。ああ、やっぱり気に入られたんだなと思いました。それ以降、娘にはお狐さまがついてくれているのか、浪人覚悟の成績だったのにあっさりひとつしか受けていない志望大学に受かったり彼氏ができたり、もちろん悩むことはたくさんありますが、ここぞというときに開き直れるようになってきています。無邪気でアホみたいに真面目なのを気に入ってもらえたようです。

 神さまは古事記の記述からもわかるように、とても人間っぽいところがあります。よく”合う神社合わない神社”と言われますが、神さまがその人を好きかどうか、信用してくれるかどうかなんだなと思っています。初めて京都の貴船神社に行ったとき、娘と二人「明らかに歓迎されてない…」と感じてすぐに帰ってきたことがありました。本当に怖かったです。それでも二回、三回と訪れるとやっと奥宮まで行けるようになり、奥宮に祀られている高龗神は人の畏敬の念を認めないと招き入れてくれないんだとわかりました。いわゆる”一見さんお断り”なんですよね。奥宮は呪いのスポットなどと言われて怖がる向きもありますが、単に”善悪はなく、深く神を信じる者の手助けをしてくれる”場所なんだと思います。

 祀られている神さまが同じでも、神社によって神さまのキャラクターは異なります。例えば同じ菅原道真を祀っていても大宰府天満宮ではちょっと厳しめで北野天満宮では穏やかな雰囲気だったり、天照大神でも伊勢では飛び抜けて荘厳だったりします。でも大元の神さまは同じなので「北野天満宮に呼ばれた」というときでもとりあえず近場の湯島天神に行って、願いが叶ったら北野にお礼参りに行くという形でも大丈夫です。

 願いを叶えたくて神社に行くときは、まず自分に合う神社であることが大前提で、それに加えて”自分でできるところまで頑張ってやっておく”ことが必要なのではないかと思います。その上で「ここまでやりました、後はよろしくお願いいたします」という場合は叶う確率は高くなります。もちろん神社の作法は守ってくださいね。その場所でずっと神さまを祀ってきた形を無視して「この方法が本当のお願いの仕方!」って、すごく傲慢じゃないかなと思います。後ろに人が並んでいるのに自分の願いを長々と語り続けたり、わざわざ祝詞をあげたりする必要はありません…だって神ですし。

 また、神さまは必ずと言っていいほどある意味での”見返り”を必要とします。天照大神だったら伊勢でのお神楽、お狐さまは金柑など柑橘系のもの、人間を祀った神の場合はなぜか甘いものを捧げるように言われることが多いです。我が家では神棚自体はありませんが、いただいてきたお札は高い位置に置いて、お榊とお神酒、その時々によって和菓子やお水などを供えています。そして神さまにとって一番の見返りは”敬い、信じること”なので、半年に一度くらいのペースでお礼参りをしています。

 まず自分で動くこと、信じること、見返りを渡すこと。その上で自分を好いてくれる神さまを見つけられれば、ご加護の力をきっと感じられるはずです。

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