ケロを含むインカで大切に扱われてきた星は南十字星、サザンクロスだ。この星を模り、縦横が三段ずつの階段状になったシンボルはチャカナ(インカクルース、アンデス十字)と呼ばれている。中心はかつてインカ帝国とその前身となるクスコ王国の首都だったクスコ(Qosqo)―ケチュア語で「へそ」ーを表している。インカ系のシャーマニズムでは、四つの方角のエネルギーを召喚して聖なる空間を作るためにチャカナが表しているものを理解しておく必要がある。
クスコ王国の第9代サパ・インカ(皇帝、ケチュア語で「唯一の王」の意)が『インカのシャーマニズム ~インカの末裔 ケロ~』でも触れたパチャクティ(パチャクテク)だ。彼は父親である先代皇帝ウイラコチャ インカ(Wiraqucha Inka)の後を継ぐと領土を拡大し、古代ケチュア語で「indi churin(インディ・チュリン、太陽の子)」と言われた。クスコ王国の正式名はタワンティン・スーユ(Tawantinsuyu)だが、パチャクティはチンチェイスーユ(Chinchaysuyu)…クスコから見て北西、コリャスーユ(Collasuyu、南東)、クンティスーユ(南西)、アンティスーユ(北東)に地方政府を置いた。スーユ(suyu)はエリアのことで、方角そのものを表す言葉ではない。
チャカナの十字で分けられるエリアはこの四つのエリアを表していて、クスコから見たチャカナの下部分はコリャスーユ、左部分はクンティスーユ、上部はチンチェイスーユ、右部分はアンティスーユとなる。ケロのシャーマニズムではメサという祭壇を作るためにマスターナという織物を使うが、四つの方角それぞれを象徴する色のついたものがあり、コリャスーユは黒、クンティスーユはグレー、チンチェイスーユは茶色、アンティスーユは白を表している。またそれぞれの方角には動物のスピリットや神聖な場所などがあるので、最後にまとめておきたいと思う。