かつて南米大陸にアンデス文明が生まれ、その後クスコ帝国を継承したインカ帝国が建国された。インカ帝国はスペインの侵攻によって滅亡することとなり、アンデス文明から続いてきた信仰や世界観はキリスト教のものに取って代わられたのだが…。
スペインの軍隊に見つかることなく、4200メートル以上あるアンデスの山で暮らしてきたインカの末裔がいる。彼らケロ族が500年の時を経て麓に降りてきたのは1959年、プレアデス帰還祭でのことだ。インカの太陽の紋章を織り込んだ衣を身につけた彼らを見て、群衆は畏怖の念から道を開けたという。彼らは預言―現在は「Mastay(マスタイ)」と呼ばれる四つの方角の人々の再統合の時であり、Munay(ムナイ、無償の愛、慈悲)がこの大きな統合の鍵となる―を伝えるために山を降りた。500年振りにインカのシャーマンの儀式が行われて以降、ケロ族はこの再統合のために広く彼らの教えを伝えている。
私も彼らの教えを請い、インカのシャーマンの系譜の末端に加わらせてもらった一人だ。ケロの師匠は、スペイン侵攻を「pachakutiq(パチャクティ、ケチュア語では文頭以外のqは鼻に抜けるような音)」だったと言う。マチュピチュを作り、インカ帝国をより強固なものにしたのはパチャクティ(Pacha kutiy)もしくはパチャクテク(Pachakutiq)と呼ばれる皇帝だ。彼はインカの人々にとってアーキタイプであり、時間の外側にいるマスター、光り輝く存在として認識されている。
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