イナンナ、エンキ、ウトゥ

シュメール語と日本語の共通点?トンデモ論で終わらせない超古代史

 今から遥か5000年を遡るメソポタミアに突如現れ、人類最古の文明を築いたシュメール人。オカルト界隈ではシュメールの神々アヌンナキが宇宙人だったのでは?という説も人気です。楔形文字を発明して天文学に長けたシュメールの人々は、歴史上でも謎が多い存在です。

 そして、この謎多き古代民族と私たちの住む日本を結びつける壮大な仮説、それが「日本人シュメール起源説」です。ユダヤだったりシュメールだったり、日本人の起源はさまざまな仮説が立てられてきましたが、この説は大正から昭和初期にかけて一部の人々の間を熱狂させました。ここでは、この説を現代の知識と科学で検証してみたいと思います。

 人々を魅了した「起源説」

 この仮説が立てられたのは、シュメールと日本でシンボルの一致が見られたという背景がありました。まずひとつは宗教にまつわるシンボルです。シュメールの遺跡からの出土品に刻まれていた花の紋章が、皇室の象徴である菊花紋章(十六弁八重表菊)にそっくりだったのです。

 神話にも共通点がありました。イザナギとイザナミの国産み・黄泉の国を訪れるなどの物語は、シュメールの創世神話やイナンナの冥界下りとそっくりです。シュメールの神殿「ジッグラト」と古代日本の神社建築や祭祀の形にも似た思想があるとも考えられました。当時はDNA解析がなかったので、シンボルや物語の類似性は何らかの繋がりを連想させるトリガーとなったのです。

言語学から見たシュメール語と日本語

 言語学的な観点から見ると、シュメール語と日本語は文法の基本構造にいくつかの共通点があります。特に語順に関しては、どちらも「主語+目的語+動詞」です。また名詞の後ろに助詞のような要素をつけてで文中の役割(〜が、〜を、〜の)を決める「膠着語」という点も同じです。しかし、トルコ語やモンゴル語、韓国語なども同じSOV型の膠着語です、構造自体がシュメールと日本の直接的な結びつきを証明するわけではありません。

 逆に、決定的に違うのは動詞の変化です。日本語は動詞の後ろに要素を足していきますが、シュメール語は動詞の前後両方に大量の接頭辞・接尾辞を串刺し状に重ねていきます。その複雑さは日本語とは比べものになりません。共通点として「An(アン:シュメール語の天)」と「天(あめ/あま)」、「Ama(アマ:シュメール語の母)」と「海女・尼(あま)」などが紹介されることがありますが、これも言語学的には偶然の一致、もしくは空耳の域を出ないとされています。2つの言語に系統的な繋がりがあると判断するには「基礎語彙(目や手などの身体パーツ、1、2、3などの数詞)」が厳密な音の変化ルールに合致するかどうかが重要ですが、シュメール語と日本語の間には規則的な音韻対応がまったくありません。

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