本気で恐ろしい拷問シリーズ 象刑
調べれば調べるほど人間の業について考えてしまう、本気で恐ろしい拷問シリーズ。今回は象に人間を処刑させる「象刑」だ。象刑と書くと妙にファンシーに思えるかもしれないが、要するに巨象が踏み潰すというものだ。前回の血の鷲は実在したのか怪しい拷問だったが、こちらは山ほど記録が残っている正真正銘の史実、しかも数百年以上も各地で行われていた。
象刑が恐ろしいのは、象の賢さを利用しているところだ。処刑用の象は入念に調教されていて、象使いの合図によって一撃で頭を踏み潰したり、手足だけを折ったりする。要するに拷問開始から死ぬまでのスピードを選べたのだ。デリー・スルターン朝では、牙に刃物をつけた象が罪人を切り裂いたという記録まで残っている。コワイ…。
1305年、モンゴル人捕虜の象刑が公開で行われた。ムガル帝国のアクバル帝は反逆者を罰するために象を使い、一人の男は5日間も象によって地面をゴロゴロと転がされ続けた赦免されたという。その間「潰すぞ潰すぞ」と顔や体近くで寸止めされたりもしていたそうだ。息子のジャハーンギール帝に至っては、娯楽として多くの罪人を踏み潰させていたという。ムガル宮廷に滞在していたフランス人医師フランソワ・ベルニエは実際に象刑を目撃し、皇帝が楽しんでいる様子にショックを受けたと書いている。異国の宮廷医の目からすれば、あまりにも度を越した刑だった。
象刑はインドだけで行われていたわけではない。スマトラ島のアチェ王国では、女王への謁見で顔を見せろと要求したオランダ使節が象刑を宣告されている。スマトラの象は罪人を宙に放り投げ、鼻で受け止めては罪人が死ぬまで振り回したという。猫がネズミをいたぶっているような…もちろんそうするように調教されたからだ。
ただ殺すだけなら剣があれば足りる。だが自然界最大級の象を意のままに操って人間を裁かせることで、王が自然さえ支配しているようなイメージが植えつけられる。象刑は処刑ではあるが、同時に権力を見せつけるためのものだったのだ。王と象の劇場は、英国のインド植民地化が進んでいくにつれて幕を下ろしていった。
象は仲間の死を悼むほど知能が高く情が深い。そしてその賢さゆえに、人間の合図で殺す速度をコントロールする処刑人になれてしまった。賢く従順だからこそ残酷な道具として優秀。象刑は調教した人間たちの本性を暴いている。