Neithsabes, CC BY 3.0 https://creativecommons.org/licenses/by/3.0, via Wikimedia Commons
【ユダヤ教の祈り シェマー・イスラエル】
ユダヤ教の祈りについて調べていたとき、「シェマー・イスラエル(聞け、イスラエルよ)」というタイトルの動画を見つけました。一人の男性が叫ぶように高台から祈るのを見て、なんとも言えない音階が印象的でした(練習してみたら、西洋音階のドレミファソラシドじゃない歌って、かなり難しいのがわかってびっくりしました笑)。ゆったりとしたリズム、音の激しい高低差など、カルチャーショックを受けました。
【古代エジプトの楽器と神々】
そういえば、古代エジプトには楽器を持っている神がけっこういます。有名なのは音楽の神とも言われるバステトあたりでしょうか。バステトはマラカスのような楽器を持った姿で描かれていて、「セケム」とか「セシェシェト」なんていうヒエログリフになっていたりもします。この楽器はハトホル崇拝の儀式で特に使われていたそうです。上にある写真は、カルナックのムト神殿入口にあるレリーフで、プトレマイオス三世と音楽家たちが女神ムトとセクメトの前で音楽を奏でています。ファラオの後ろの人が演奏しているのは「ベネト」というハープですね。ガーディナーが作ったヒエログリフのカテゴリーには「Y. 筆記、ゲーム、音楽」があるほどで、古代エジプトでも神と音楽が近しい関係にあったことがわかります。シストラムは古代ミノア文明でも使われていて、クレタ島のアルカネスにある宮殿の遺跡から、粘土製のシストラムが発掘されています。
【古代メソポタミアの楽器とギルガメッシュ叙事詩】
古代メソポタミアからもハープやリラ、リュートなど現在の楽器の元になったものが数多く出土しています。B.C.4000年頃に書かれたとされる(※古バビロニア版、アッカド語)『ギルガメッシュ叙事詩』の中には、歌のジャンルやリラの調弦などの音楽構造が書かれていた版があります。そういう意味では世界最古の楽譜なんですね…。メソポタミアは多神教で「各都市がそれぞれの神を信仰しながら他の神にも寛容」という文化でしたが、それだけに毎日が何かしらの神を祝う日となり、王は神官たちと共に日々祭祀を行いました。その神官の中には占い師や詠唱者、そして音楽によって神の怒りを鎮める者がいたことがわかっています。
【ヒンドゥー教に伝わる「バジャン」】
元をたどれば紀元前13世紀、基盤をバラモン教にまで遡れるヒンドゥー教は、現代にまで続くスーパー古代宗教と言えるでしょう。このヒンドゥー教にはバジャンという祈りの歌があって、Apple Musicでもすごい数が配信されています。シヴァ神がダマルという太鼓、妻にあたるサラスヴァティーが弦楽器のヴィーナーを演奏する姿で描かれることがあるほどで、歌うことで祈るという儀式は脈々を受け継がれてきました。バジャンに参加したことがありますが、神に向けて歌う(というか叫ぶというか)うちに気分が高揚してくるんですよね…。
【神聖なものとしての歌や音楽】
古代各地で、神とのコミュニケーションを取るために、歌や音楽が大切な役割を果たしてきました。楽器の演奏や歌は娯楽というわけではなく、神への思いを深め、神聖な気持ちを呼び起こすためのものだったんですね。そういえば、難しそうな曲を弾いたりすごい声で歌っている人を見ると、なぜか圧倒されちゃいますよね…。私たちは古代から続いてきた音楽の神聖さを感じ取っているのかもしれません。