今さらMBSの『世界ウルルン滞在記』にはまり直してしまった・・・。リアルタイムの放映は1995年から2008年、今となってはとんでもなく豪華な旅人たちが世界各地でホームステイをする番組だ。若き日の藤原竜也は愛される雰囲気しか持ってないし、飄々とその場になじむ黒田勇樹やアフリカの家族の気持ちを受けてイモムシを口にした遠野なぎこ、ザ・ウルルンだった山本太郎。相手の文化に馴染もうとする旅人たち、好きだなあ。
なんとなく都会じゃない場所の回ばかり選んで見てしまう。やらせだ何だと言われても、その風景は本物ですからね!まだアフリカや南米はハードルが高かった時代。見せてもらっていた世界の暮らしに憧れ、いつのまにか「貨幣はわるい文明」とか「野生ニンゲンとして暮らしたいんだよ!」などという中年になってしまいました。
そこで、今回は「アフリカで最も美しい」「世界一美しい」と言われる部族、ヒンバ族について調査!ウルルンではレジェンド・山本太郎が訪れてましたね。仲良くなっていたヒンバ族の青年たちは実におしゃれでした。
ヒンバ族はオムヒンバ(複数形ではオヴァヒンバ)と呼ばれる約5万人の部族。クネネ川を挟んでナミビア北部とアンゴラ南部のクネネ地域に住んでいます。山羊と羊を飼い、牛の頭数で豊かさが決まる半遊牧民です。主食はトウモロコシ粥とミルクで、蜂蜜や卵、ハーブなども食べます。食品を買ったり医療を受けたりするために頻繁に町に行くそうで、選択的に今のエリアに住んでいるんでしょうね。
ナミビア政府から干ばつ救済援助などわずかな現金が入るものの、メインは遊牧。男性が家畜の世話をしたり家を建てたりを行い、女性は水汲みや薪の採集、食事作りなど家回りの仕事を行って暮らしています。女性たちはほかの女性の子育てを手伝い、孤児や未亡人も世話を受けられるとのことで、どこかの国よりよっぽど安心できる社会かも…。一夫多妻制で、女性は父親が選んだ相手と結婚します。結婚の際に花婿の家から花嫁の家に牛が贈られるという慣習は、日本で言えば結納ですよね。
ヒンバ族の髪や肌は赤みがかって見えますが、これは乳脂肪と黄土色の顔料を混ぜたオチゼという化粧品を全身に塗っているからです。皮膚を清潔に保ったり虫除けの効果もあるそうで、おしゃれだけでなく効能的にもその土地にふさわしい一石二鳥のペーストです。
上の写真のように、思春期の男の子は一本、女の子はオチゼを塗った髪を何本も三つ編みにします。結婚して1年経過した女性・子供がいる女性はさらにエレンベと呼ばれる羊の皮でできた華やかな飾りをつけます。既婚男性は髪を編まずに帽子をかぶり、もし奥さんに先立たれると帽子を脱いで編まない髪を出したままにするというので、その人の婚姻状況が一目でわかるようになってるんですね。水が少ない地域なので、木の灰で髪を洗うんだそうです。
ヒンバ族が信仰しているのはムクルという神で、基本的には一神教ですが祖先崇拝が加わります。ムクル神は祝福だけを与えてくれますが、祖先は呪いを与えてくることも…。それぞれの家にはオクルウォと呼ばれる神聖な火があり、それを通じてムクル神や祖先とコミュニケーションを図るんだそうです。ムクル神は遠くにいるので、祖先が代理人になるなんてことがよくあるんだとか。先祖は怖い!ということで、いい関係性を築くための聖なる家畜が飼われています。
そしてオミチと呼ばれる黒魔術的なものも…。 オミチは人に死をもたらし、誰かの心によくない考えを植えつけたり、異常な出来事を引き起こしたりする力があると信じる人もいるほど力を持っています。いわゆる呪いとか呪術が生きている場所なんですね。一方、対抗勢力として占い師という存在がいます。山羊を窒息死させて解剖し、内臓の状態を読んで相談に答えるそうです。占いとしてはなかなかハードルが高いし、難しそう。
そんなヒンバ族に、いま危機が訪れています。予算不足で何年も止まっていたクネネ川の水力発電所建設プロジェクトに関する協定が、ナミビア政府とアンゴラ政府の間で承認されたのです。
このベインズ水力発電プロジェクトでは、観光客も訪れることの多いエプパ滝から48km下流に水力発電ダムが建設される計画です。墓地15ヶ所と考古学遺跡45ヶ所がダムに沈み、ヒンバ族の2000人以上に影響が出ると言われています。ヒンバ族は「干ばつ時に水力発電は意味がない」「ダムは水の年間消費量の2倍を蒸発させる」という理由で太陽光発電や風力発電を提案してきましたが、ナミビア政府はダムにこだわり続けています。
かつてアメリカや南米、北海道など世界各地で先住民族の暮らしが蹂躙されてきた歴史は、現代になっても繰り返されてしまうのでしょうか。美しく強く、厳しい自然や大地に根ざして生きてきた人たちを文明という一方的な価値観で殴るようなことはしてほしくありませんが…。