
バミューダ・トライアングルの謎と真実
バミューダ・トライアングル――それは、フロリダ半島の先端、プエルトリコ、バミューダ諸島を結ぶ神秘的な三角形の海域。海藻が多く「粘り着く海」として知られるサルガッソーもこの海域にある。かつてこのエリアは「魔の海域」と呼ばれ、船や飛行機が次々と姿を消したとされた。その理由として、「時空の歪み」「海底ピラミッド」「宇宙人の関与」といった数々のオカルト説が飛び交った。1970年代にはチャールズ・ベルリッツの『謎のバミューダ海域』が20ヶ国以上で翻訳され、世界的なブームに。日本でもこのミステリアスな海域は頻繁にメディアに取り上げられ、多くの人がその謎に魅了された。
科学で解き明かされた「魔の海域」
だが、時代が進むにつれて、バミューダ・トライアングルの「謎」は科学的に説明できるようになった。現在では、次のような理由から事故の多くが説明されている。
・突然変わる天候
この海域はハリケーンの通り道で、突発的な嵐が発生しやすい。視界不良や強風のために船舶や航空機が遭難するケースは少なくなかった。
・メキシコ湾流の影響
メキシコ湾流は非常に速い海流で、沈没した船の残骸がすぐに流されてしまう。そのため、事故の痕跡が見つからず「忽然と消えた」ように思われた。
・メタンハイドレートの噴出
海底にメタンハイドレート(固体メタン)が大量に存在し、地殻変動によって一気に放出されることがある。この現象が起きると海水の浮力が低下し、船が沈没する可能性がある。
・ナビゲーションの誤りと人為的ミス
バミューダ・トライアングルでコンパスが異常を起こすのは地磁気の影響が考えられる。また過去の事故の多くは操縦ミスや燃料不足が原因だった。
・誤報と誇張
過去に報告された「謎の失踪事件」の多くが誤報や誇張だったとわかっている。謎のバミューダ海域』に登場する36件のうち、少なくとも23件は誤認だったという。
フライト19事件の真相
バミューダ・トライアングル界隈で有名な「フライト19」も、超常現象とは無関係のようだ。1945年、アメリカ海軍のアベンジャー雷撃機5機が飛行演習中に消息を絶ったこの事件では、通信記録からコンパスの誤作動が確認されている。バミューダ島周辺は火山帯で玄武岩が多く、最新の調査では五千億トンの磁鉄鉱があることがわかっており、これが磁気異常を起こした可能性がある。
さらには、演習のリーダーが「空間識失調(平衡感覚を失う現象)」を起こしていたことも示唆されている。通信記録にはリーダーではない人物の「ちくしょう、西に飛べれば家に帰れるのに」という発言が残されている。アベンジャーの捜索に出た飛行艇PBMマリナーと乗組員14名も立て続けに消息を絶ち、どの機体の残骸も見つかっていない。
「魔の三角地帯」から普通の海域に
現在のバミューダ・トライアングルは普通に船舶や航空機が航行するエリアとなっていて、特に危険とは考えられていない。統計的に大西洋の他の海域より事故率が高いわけではなく、アメリカ海洋大気庁(NOAA)や保険会社のデータでも、異常な事故発生率は見られない。バミューダ・トライアングルのオカルト的な側面は、都市伝説の一種と言えるだろう。
かつては未知なる恐怖のエリアだったバミューダ・トライアングルは、今やオカルト好きの間でも半ば忘れられた存在になっている。だがこのエリアを巡る観光ツアーは今でも存在し、一部の人々にとってはロマンやミステリーの象徴のままだ。かつての「恐怖の三角地帯」は、今や歴史的なオカルトネタとして親しまれているのだ。

