後頭部に大きな口があるのが特徴の妖怪。それ以外は人間の女性の姿をしているとされる。人前では食事を摂らないという。元々は人間の女性が奇病に罹ったものとされているが、髪を蛇のように操り後頭部の口で食事をする絵が描かれていたりする。
江戸時代の奇談集『絵本百物語』に描かれた話では、下総国(現在の千葉県)に嫁いだ後妻が自分の産んだ子だけを可愛がり、先妻の娘を餓死させてしまったことが発端とされている。鬼の所業とも言える行為をしていた女は、娘の四十九日後、薪を割っていた夫の斧が後頭部に当たり、後頭部が割れた。その傷口は口のようになり、やがて歯や舌のようなものができたのだが、ある時間になると痛み出して食べ物を入れると治まった。その口は「先妻の子を殺してしまった」と話したという。
また昔話での二口女は、強欲な男が「飯を食わない女房がほしい」と神に願い、その強欲ぶりを戒めるために遣わされた化け物として描かれることもある。女房は何も食べずによく働くのだが、男や子供が寝静まった真夜中になると肩にある口で大飯を食らう。その正体がばれた後の話としては、男を食べようとするものと子供を連れて会いに来るように告げて去っていくものがある。
この二つの説は前者は病気になった人間、後者は山姥が化けたものとされている。