365日 光と闇の暦 6月4日 記憶と忘却の狭間で ムネモシュネとレテ
今日の光の神:ムネモシュネ(ギリシャ神話・記憶の女神)
「memory」の語源となったムネモシュネ(Μνημοσύνη / Mnēmosýnē)はギリシャ神話に登場する記憶の女神です。ティターンと呼ばれる古い神々の一人で、ゼウス以前から存在していました。ゼウスと9夜を共にし、9人のムーサと呼ばれる芸術の女神を儲けます。古代ギリシャで詩人はムネモシュネの記憶の泉からインスピレーションを汲み上げるとされ、詩は文字ではなく記憶するものでした。記憶は文明の基盤で、ムネモシュネはその守護者です。
今日の闇の神:レテ(ギリシャ神話・忘却の河)
ギリシャ神話において、レテ(Λήθη / Lḗthē)は冥界を流れる忘却の河です。魂となった死者がレテの水を飲むと、生前の記憶はすべてなくなります。オルペウス教やプラトン哲学では、魂は輪廻転生の前にレテの水で過去を洗い流します。これは白紙の状態で新しい生を始めるためで、過去を忘れることは再生に向けての浄化を意味していました。ギリシャ語で「真実」を意味するアレーテイア(ἀλήθεια)は「レテでない状態」という意味です。
光と闇
ムネモシュネは記憶、レテは忘却という相反する要素を象徴しますが、人間にはどちらも必要なものです。記憶できなければ学んだことを蓄積していくことはできませんし、辛い記憶を忘れられなかったら過去の痛みに囚われてしまいます。記憶と忘却は対となって人生を動かしていきます。どちらか一方でも欠けてしまったら、私たちは前に進むことができなくなるでしょう。
この日のテーマ 何を覚え、何を忘れるか
同じ時間や空間を過ごしても、ある出来事について鮮明に覚えている人もいれば出来事そのものを忘れている人もいます。また、何の意味もない古い記憶が残り続ける一方で、覚えていなければならない記憶が抜け落ちてしまうこともあります。何を覚えていて何を忘れるかは時に意志とは無関係になされることがあります。私たちは無意識にムネモシュネとレテの間を行き来しているのです。