猫ちゃん

フェリノマンシー入門 飼い猫から今日を占ってみよう

 猫と暮らしている人なら一度は感じたことがあるはずですーこの子、何か見てるんじゃないか?と。ソファの上からじっとこちらを見つめたり、急に部屋の隅を凝視して動かなくなったり。猫ちゃんたちは、いったい何を見ているのでしょうか。

 猫の行動から占う方法には「フェリノマンシー」という名前がついています。ラテン語の猫「felis / フェリス」とギリシャ語で占いという意味の「-mancy / マンシー」を組み合わせたものです。名前自体は近代になってからつけられたものですが「猫の行動には意味がある」という発想は、驚くほど昔から世界中にありました。

猫が神だった古代エジプト

 猫占いの大元を探るなら、やはり古代エジプトから始めるべきでしょう。エジプト語で猫はmjw(ミウ)。鳴き声そのまま、擬音語からついた名前です。そんなミウたちは単なるペットではありませんでした。

 猫の顔を持つ女神バステトは豊穣と家庭の守護神として大人気で、聖地ブバスティスでは毎年盛大なお祭りが開かれていました。ヘロドトスは「エジプト人は飼い猫を亡くすと眉を剃って喪に服した」と書いています。さらに時代を経て、ディオドロスが衝撃的な事件を書き残しました。ローマ人が誤って猫を殺してしまい、エジプトの群衆が激怒してその男を殺したというのです。ローマとの関係が悪化するのは承知の上でした。猫を傷つけるのはそれほどの重罪だったんですね。

 『死者の書』には、太陽神ラーが巨大な猫の姿で混沌の大蛇アポピスを切り裂く場面が描かれています。猫は闇を退けると考えられていて、神の意向を伝えるための器でした。神が宿るのですから、人々が猫たちのの一挙一動を見ていたのは当然だったといえます。

世界の猫たち

 猫の行動を占いのように読んだのはエジプトだけではありません。ヨーロッパでは古くから「猫が耳の後ろまで念入りに顔を洗うと雨が降る」と言われてきました。くしゃみをひとつすれば雨、暖炉に背を向けて座れば嵐や寒波が来るとも。船乗りたちの間では天候を司ると考えられていた猫は船にも乗せられ、怒らせたら嵐を呼ぶと恐れられました。逆に猫を大切にする船は安全に航海できたそうです。

 東洋にも面白い話が残っています。唐代の随筆『酉陽雑俎』には「猫が顔を洗って前足が耳を越えたら客が来る」と書かれています。どこかで聞いたことがありますよね…。そう、招き猫のルーツなんです。ちなみに右手を挙げた猫は金運、左手を挙げた猫は人との縁を招くとされます。左右の区別は後で紹介する実践編にも出てきます。

実は根拠がある? 猫とお天気の話

 ここを素通りするわけにはいきません。猫の天気占いには、なんと生理学的な仮説が存在するんです。猫のヒゲはとても敏感な感覚器官で、湿度の変化を感じ取るといわれています。湿度が高くなるとヒゲが重くなるので、雨の前に猫が念入りに顔を洗うのは「ヒゲを整えるためではないか」というのです。また、猫の内耳は気圧の変化に敏感だともいわれ、低気圧の接近を人間より早く察知して行動している可能性もあるんだとか。

 これらはあくまでも仮説で、猫が顔を洗ったから必ず雨が降るわけではありません。ただ、昔の人々が感じたことにはそれなりの裏付けがあったのかもしれない、と考えてみる余地はありそうです。

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