心霊・怪談

蜂毒

蜂

 子供の法要は何年経っても慣れない。私が僧侶として未熟なせいもあるだろうが、子を見送った親の表情は晴れることがない。そして、これから訪れる家に出向くのに気が重い理由はもうひとつあった。

「暑い中ありがとうございます、今年もよろしくお願いいたします」

 笑顔で迎えてくれたAさんは40代男性、娘を小学生のときにいじめ被害による自殺で亡くしてからもう10年になる。ご存命なら今年で18歳だったはずだ。間違えるはずがない、亡くなった娘さんは学校こそ違うが私の息子と同じ学年だったからだ。法要を勤めお茶をいただく。何度来ても溜息の出る立派な日本庭園だ。大きな和風の邸宅は品が良く瀟洒で、このエリア有数の養蜂家Aさんの豊かさと穏やかな人柄を現わしていた。息子を気にかけていただき自然とAさんの娘さんの話になった。と、Aさんが急に切り出した。

「住職、ご存知ですか?例の女の子が事故で亡くなったの」

 私ははい、と返事をするが、なんと返せばいいか分からない。亡くなった女性は小学生の頃Aさんの娘さんをいじめていたリーダー格だったはずだ。遺書に彼女の名前があったが、狭いムラ社会で人々は変化を嫌い波風をたてぬように生きている。当時Aさんの娘さんの悲劇を私も耳にしたが、学校や役場の人間は加害者を庇いだて、何事もなかったかのように事件は処理された。当時の私は怒り心頭だったが声をあげることはできなかった…そして例の女性が先日死亡した。そんなこともありAさん宅に伺うのは気が重かったのだ。「こわいですね」Aさんは乾いた口調で言った。

「しかも行方不明になって次の日に見つかったときの様子を聞いてゾッとしましたね、ご存知ですか?」

 会話の内容についていけず嫌な汗が背中をつたう。か細くいいえと返事をしたと思う。

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