世界の都市伝説を巡るお話、略して『せとでん』。名古屋を走る電車とは全く関係ありませんのであしからず。
こちらは中世のヨーロッパの探検家や学者の間で語られてきた都市伝説です。黒海沿岸や中国、モンゴル各地の荒野に、ヒツジが入った実がなるという伝説の植物が生えているとされていました。スキタイの羊やダッタン人の羊、リコポデウムとも呼ばれるヒョウタンに似た植物で、時期が来ると実をつけ、その実を割ると子羊が収穫が出来る。熟すまで放置すると中から茎に繋がったまま羊が産まれ、ぶらさがりながら周囲の草を食べて成長し、食べられるものがなくなると羊も木も刈れてしまうという何とも不思議な植物です。正式な名称は「プランタ・タルタリカ・バロメッツ」と言います。
ダッタン人のダッタンは韃靼そばで有名な韃靼ですね。モンゴル系部族を呼ぶときに使われる名称の一つです。日本ではこの韃靼そばがブームになった事もあり、今でも一部の自販機に韃靼そば茶があったりもします。
枯れたバロメッツの木の周りには、死んだヒツジを求めて狼や人間が集まってくると言います。狼は羊肉を、人間は羊毛を採りに来ていたのでしょう。この羊毛は金色で肉はカニの味がするとされ、大変重宝する木だったと言われていました。カニの味がする肉は不思議ですよね…。だったらカニを食べればいいのでは?とも思いますが…。
よくファンタジーもので植物と動物が合体したような生き物が登場しますが、バロメッツの木がモチーフになったものも多数あると言われています。ファンタジーな世界を創作する時によく使われる有名な辞典があるので、ご興味がある方は”ホルヘ・ルイス・ボルヘス”、”幻獣辞典”で検索してみてください。ケルベロスやゴーレム、クラーケンなど有名なものから初耳なものまで紹介されています。
マンドラゴラやバロメッツのような伝承や都市伝説があるのは、古代の人たちも不思議な現象や体験を残したかったのかも知れませんね。