昭和を彩ったミステリーサークル 名乗り出た犯人たち
1980年代のイギリス南部の麦畑で、ある朝突然発見された巨大な幾何学模様。麦は直径数十メートルの円形に倒され、上空から見ると完璧な幾何学パターンになっていました。でも周辺には踏み荒らされた跡がなく、一晩でどうやって作ったのかはわかりませんでした。これはミステリーサークルと呼ばれ、UFOが着陸したと考える人が出現します。逆にこれはプラズマ、自然現象としての空気の渦が作ったのだと主張する科学者もいました。テレビでは航空写真が繰り返し映され、日本でもムーや特番を通じて「イギリスの畑に宇宙人が模様を描いている」というイメージが広がっていきます。
ところが1991年、この論争に決着がつきます。ダグ・バウアー(Doug Bower)とデイヴ・チョーリー(Dave Chorley)という二人のイギリス人男性が「全部自分たちが作った」と名乗り出たのです。彼らは板とロープと測量用の針金だけで描いたと言いました。板で麦を踏み倒し、ロープを軸にして円を描いた実演映像は、あっけないほど単純な方法でした。
犯人が名乗り出た以上ミステリーサークルの謎は解けたはずですが、論争はそれでも続きました。
2人が告白してからも新しいサークルは出現し続け、しかもデザインがより複雑なものになっていきます。フラクタル図形、マンデルブロ集合、DNAの二重螺旋を模したもの、バイナリコードで書かれたメッセージ。模倣犯 — もしくはアーティスト — が次々に現れ、オカルト現象だったはずのミステリーサークルは「大地に描く匿名のアート」に変貌しました。人為的なものだとわかってからも、多くの人々が畑を訪れてミステリーサークルを見学しました。一夜にして麦畑に出現する模様は、それを描いたのが宇宙人であれ人間であれ美しいものだったのです。
事実が判明してからも人気が続いているオカルト現象は珍しいと言えます。ミステリーサークルは「正体がばれてから本質が見えてきた」という稀有な事例なのかもしれません。