(Geni, CC BY-SA 4.0, from wikimedia commons)
アッシリアの水晶レンズとは
今回は「アッシリアの水晶レンズ」をご紹介します。この遺物は、ニムルドの水晶レンズやアッシリアの水晶レンズと呼ばれ、現代のイラク北部ニーナワー県にある古代アッシリアの遺跡から発見されました。古代アッシリアは紀元前600年あたりからチグリスユーフラテス川の上流周辺で栄えた文明。そして最終的にはメソポタミア、シリア、エジプトを含む帝国を築きました。この文明の遺産は第3中間期のエジプトやギリシア帝国に受け継がれ、影響を与えたと考えられています。
この水晶で出来たレンズ、大きさは直径4.2センチと小さめ。片面が凸面、もう一面は平面の、倍率約3倍の平凸レンズの形です。平凸レンズは主に、像の拡大や集光に使われるレンズ。平たく言えば虫眼鏡ですね!出土した遺跡などから、制作された年代は紀元前10世紀~9世紀だと考えられています。
水晶レンズ発掘と用途
発掘したのはオースティン・ヘンリー・レヤード博士。フランス生まれのイギリスの考古学者です。1840年代に行った調査・発掘を記録した本を出版しました。一冊は「Discoveries in the Ruins of Nineveh and Babylon(ニネヴェとバビロン遺跡の発見)」。そして「A Second Series of the Monuments of Nineveh(ニネヴェのモニュメントの第2シリーズ)」です。これらは考古学的な業績だけでなく、旅行記としても最高の作品と評価されています。
しかしこの水晶レンズ、レンズの機能は明らかではありません。あるいは祭事などの時に光を集めて着火するのに使った、装飾に使われていた。または空を観察するための望遠鏡として使われていたのでは?など、色々な説があります。単純な構造だけに、推察するのも難しいのかも知れませんね。そしてこの水晶レンズは天然の水晶なので経年劣化はほとんどありません。また加工に関しても、根気よく細かい砂で磨けば時間はかかるが作れるとされています。
発見者・レナード博士の言葉
レナードは「この小片(水晶レンズ)は多くの不透明な青いガラスの下から出土し、それらのガラスは朽ち果てた木製・象牙製の何かを覆っていた象嵌材の破片と考えられる」と書いています。象嵌と言うのは何か作られたものに後から違うものをはめ込む工芸手法のことです。レナードは朽ち果てた何かにはめられていた水晶の装飾品と考えたのかも知れませんね。
この「アッシリアの水晶レンズ」は現在、大英博物館に展示されています。ご興味がある方は是非行って、ロマンに思いを駆け巡らせてもらえればと思います。