Dawoud Khalil Messiha, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で
本日は「古代エジプトのグライダー」のご紹介です。「古代エジプトのグライダー」はサッカラ・バードとも呼ばれ、現在のカイロから南に約30kmほど行ったところにある「サッカラ」という古代エジプトの巨大な埋葬地で発見されました。この埋葬地には階段ピラミッドやマスタバと呼ばれる貴人の墓が多数あります。
古代エジプトのグライダーは、1898年にサッカラにあるプトレマイオス朝時代の墳墓から発掘されました。紀元前200年前後のものですね。材質はレバノン杉で全長14cm、両翼を合わせた長さが18.5cm、重さ約40gの小さい鳥の模型のような形をしています。胴体は尻尾の方に向かって縦型に薄くなっていて、最後部は飛行機の尾翼のように薄く垂直の形をしています。また、胴体には長い翼が取り付けられていて鳥に似ています。しかし見方を少し変えると飛行機にもよく似ています。
発見当初は鳥だとされていたこの工芸品ですが、1969年にカリル・メシハという博士が「これはグライダーだ」と発言したことで事態が急変しました。エジプトでは特別調査委員会が設けられ、考古学者が航空力学の専門家が集められ、この工芸品の詳細な調査が始まります。このカリル・メシハと言う人物は、内科医かつアマチュアの考古学者という何とも不思議な経歴の持ち主です。しかし話が大きくなっていったのは、この工芸品が本当にグライダーだとすれば歴史的発見になるからだと思います。
飛行機の発明はかの有名なライト兄弟によるものですが、グライダーはそれよりも前の1800年初頭に航空学の父とも言われるイギリスの工学者・ジョージ・ケイリーによって考案、制作されました。サッカラで発掘されたものがグライダーだとするならば航空力学が紀元前からあったということになり、模型を作って実験されていたという証明になるのです。
調査委員会によると「翼は中央が高くなるように加工されていて”揚力”を得るための原理に一致している」。左右の翼の端の反り方も機体の安定を保つのにふさわしく、これはやはり航空機のレプリカなのではないかと結論づけられました。
となると古代エジプトの空にはグライダーが飛んでいたんでしょうか…。古代エジプトと言うには年代が新しいような気もするし、グライダーの現物、またはそれに近しいものも全く見つかっていません。カイロの博物館ではこの模型を「グライダーの模型」として公開していましたが、現在は公開されていないようです。本当にグライダーの模型だったのか、作られた鳥の模型が偶然にも航空力学の要素を満たしてしまったものなのか、キッチリと判明されることはないと思います。
と言うわけで、今回はたまたま似ちゃった説を推したいと思います。古代のエジプトの空を無数のグライダーが飛んでいる光景も面白いと思いますが、飛ばすための動力はどうしたのか着陸はどうしたのか疑問は数多く出てきちゃいますからね。それよりもたまたま飛べるものが作れてしまい2000年経ったあとに発見されると言う天文学的な確率を引き当てたと言う方が面白いし夢がロマンがあると思います。おそらく宝くじを当てるなんてレベルを遥かに超えた確率を引き当てたんでしょうね…。すごい。
それでは今回はこの辺で。