脳腸相関

脳腸相関と直感 内臓が持つ第二の意識

日本人に伝わってきた「ハラ」

 「腹が立つ」「腹を据える」「腹を割る」― こんな日本語の表現には、人の精神や医師の中心は「腹」にあるという昔からの感覚が込められています。この考え方は西洋人にとっても興味深かったようで、ドイツの哲学者カールフリート・グラーフ・デュルクハイムは、日本人にとって「ハラ」は精神と肉体が完全に調和した「生命の根源的な中心」だと説明しました。

 この考え方は現代医学とも重なるところがあります。近年、腸は「第二の脳」と呼ばれるほど重要な器官として注目され、脳と情報を交換し合っているという「脳腸相関」が明らかになりました。腸には脳に匹敵するほど多くの神経細胞が密集しています。しかも、脳からの指令を待たずに自ら判断して働くことができる唯一の臓器なのです。

幸福感の元 セロトニン

 幸福感や安心感をもたらす神経伝達物質「セロトニン」の約90%以上は、実は脳ではなく腸で作られています。私たちが「なぜか不安だ」と感じるとき、腸からの信号が脳の情動領域に働きかけていることがわかっています。さらに、直感やひらめきを指す英語の「Guts feeling(腸の感覚)」という言葉通り、腸は論理を超えた「見えない真実」を察知するセンサーとしても機能しているのです。

 腸で作られたセロトニンが直接脳に届くわけではありません。しかし、腸内細菌たちが生み出す代謝物質が脳に対して「セロトニンを作れ」という指令を、迷走神経を通じて送っています。つまり、脳という思考のスクリーンに映し出される「気分」は、腸内細菌たちのバランスそのもの。うつ病患者の腸内フローラをマウスに移植すると元気がなくなったという実験があるほどで、私たちのアイデンティティや幸福の主導権は、お腹にいる微生物たちが握っているのです。

マイクロバイオームと意識の共生関係

 それが私たちの腸内にいる100兆個を超えるといわれる細菌、マイクロバイオームです。彼らは独自の化学物質を通じて私たちの脳と常に対話を行っています。マイクロバイオームのバランスが個人の性格やストレス耐性、他者への共感能力にまで影響を及ぼしているという研究も。私たちが自分の意思だと思っているものが、実は体内に住んでいる無数の生命体と共同で作られたものだったのです。

 腸内環境が乱れて慢性的な炎症が起きている状態だと、脳に送られる信号に大量のノイズが混じります。この状態で瞑想や精神修行に励んでも、純粋な直観は受け取れないでしょう。心の曇りは腸の曇りから始まることがあります。腸を整えることはただの体調管理ではなく、意識の受信機を磨き上げるための「霊的な基礎工事」でもあるのです。

直感を取り戻すために内臓を浄化する

 直感力が鈍ったり決断を迷ったりしているなら、思考で解決しようとする前に「腹」を意識してみてください。発酵食品を積極的に摂取し、保存料や過剰な糖質など「細菌たちの環境を乱すもの」を避けることは、直感の感度を高めるためのワークでもあります。適度な断食、寝る数時間前には食事を終えるなど「内臓を休ませる時間」を設けることも、腸に溜まった物理的・エネルギー的な停滞を解消して脳への信号をクリアにします。

 食事のときにはただ栄養を摂るだけでなく、体内の細菌たちと対話するイメージをするのもいいでしょう。実際の意味で「内なる」生命たちの声を聞けるようになれば、あなたの直感はより正確なものになっていきます。澄んだ腹を持つ者は、人生の荒波においても迷うことなく、進むべき道を歩くことができるのです。

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