シュタイナーの糸と釘で作る模様

シュタイナーの霊学トレーニング すぐに始められる6つの練習

 シュタイナーには幼い頃から見えない世界を知覚する能力がありましたが、「この認識は訓練によって誰でも到達できる」と言い切っていました。著書『いかにして超感覚的世界の認識を獲得するか』はある意味でシュタイナーが見ていた世界を見るための練習マニュアルです。その内容は実に地味なので、霊界と交信する技術を期待するとがっかりするかもしれません。今回は核心部分ともいえる「補助練習」と呼ばれる6つをご紹介します。地味さの理由は最後にわかると思います。

練習の前に

 シュタイナーが練習する前に必要だとしたのは二つの心構え、「真理と認識」です。まず一つ目は畏敬の念を持つこと。真理やまだ自分が知らないことに対して素直に首を垂れることが大切だと説きました。疑いや嘲笑から入る人には、世界は表面しか見せてくれません。心から尊敬できるもの、すごいと思えるものを持っている人ほど、深いところまで入っていけるとシュタイナーは考えました。もう一つは内的な静けさで、1日数分でも日常から離れて自分の内側と向き合う時間を持つことが大切だとしました。

 シュタイナーは「霊的な認識を1歩進めたいなら、人間としての成長を3歩進めなさい」と言いました。この順番を守らずに能力を開こうとするとどうなるか、シュタイナーはよく知っていたのです。

6つの練習

 6種類の練習方法を基本的に順番にやっていきます。1か月ごとに新しい練習を1つ加え、前の練習も引き続き行ってください。2か月目は1と2、3か月目は1から3までという形になります。

1. 思考のコントロール

 クリップや鉛筆などの日常的に使うものを1つ選び、5分間それについてだけを考えます。材質、作られた行程、使い方など、内容は何でもかまいません。考えが別のところにそれたらすぐに戻してください。簡単そうに思えますが、実際にやってみると最初は1分も持たないと思います。これを毎日、1か月ほど続けます。

2. 意志のコントロール

 毎日決めた時間に、意味のない行動をします。例えば午後3時にノートを開く、指輪を逆の手につけるなどなんでも大丈夫です。自分にとって役立つことなら自然にモチベーションが湧きますが、意味のないことをするなら意志だけが頼りです。この練習によって意志が鍛えられます。

3. 感情を乗りこなす

 この練習には決まった時間がなく、感情が動いた瞬間が練習の時間になります。例えばかっとなったとき、言葉や態度に出す前に一呼吸置いて「今自分は怒っている」と一歩退いて観察します。うれしくて舞い上がったときなど、大きく感情が動いたときも同じように観察してください。まず観察した上でどこまで表現するかを決めます。これを練習していくうちに、感情に引きずられる時間が短くなっていきます。

4. いいところ探し

 苦手な人、嫌気がさすような出来事、退屈な仕事などの中に、いいところや美しい面、学べる点を見つけましょう。悪いところは悪いところとして置いておいてください。これは悪いところだけでなく逆の面を探す練習です。人間は自然のままだと世界の半分だけを見てしまいますが、物事の両面を見ると全体性に気づけるようになります。

5. 決めつけない

 初めて聞く話や自分の考えと合わない意見にぶつかったときが練習になります。ありえない、と決めつけずに最後まで話を聞いてみてから判断するように心がけます。今までしてきた経験は判断を補助してくれますが、自分の経験に基づいて判断するだけでは新しいことは学べません。

6. 調和

 6か月目に入ったら仕上げの段階、ここまでの5つを組み合わせて練習していきましょう。集中の練習は1日5分でしたが、ここからは仕事や家事をしている間にも思い出してやってみます。慣れてくると5つを別々に意識しなくても自然にできるようになります。これまでに練習してきた5つを日常に落とし込んでいくことが6番目の練習だとシュタイナーは位置づけていました。

なぜこんなに地味なのか

 ここまで見ておわかりのように、超感覚の訓練なのに思考と意志と感情のトレーニングばかりです。これには明確な理由があり、高次の知覚を獲得したら、より多くのもの、強いものが流れ込んでくることになるからです。自分の思考を5分すら制御できず、感情に日常的に振り回されている状態でそうなったら、人は流れ込んでくる情報に飲み込まれてしまうでしょう。6つの練習が意図するところは、いずれ来るものを受け止める器の工事なのです。

 そしてこの6つは、霊的な世界に興味がなくても日常の中で使えます。集中力が増す、自分の意志を持つ、感情を制御できる、物事を全体性として見られる、新しいことを身につける準備ができている。こうしたものを単純に言えば、よりよく生きるための技術だと言えます。霊視ができるようになるかどうかはともかく、やって損のない修行というのは珍しいのではないでしょうか。

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