【古代エジプトにおける創成神話】
古代エジプトではまず宇宙の海、Nn(ヌン)と呼ばれる混沌があった。Nnは男性性Nnと女性性Nwnt(ヌウネト)が合わさり、総合的にNnと呼ばれる。ここには「何もなくて全てがある」。これは量子物理学が見出した「無」と同じだ。仏教で言えば「空」になるし、スピリチュアルならゼロポイントになるだろう。
この宇宙の海に、あるとき意識が生まれた。エネルギーの凝縮、収縮という重力の作用で顕れたこの意識は’Itm(アタム、アトゥム)と呼ばれる。’Itmは秩序を持ったエネルギー母体で、Nnからのエネルギーを秩序に従って放出する。この点で’Itmは「完全なる者」とされる。
’Itmは全てのものの属性=名前によって表されるものの集合体であり限定できない。そのため、これ以降に生まれる神々は全て’Itmの一側面を表したものだ。つまり「機能や原理、生命力のひとつの表現」を現している。古代エジプトの神々は「神」と呼ばれはするものの、何らかの働き=原理を表した存在なのだ。’Itmの誕生によって、ここで無=0は1になり、0=1の式が成り立つ。
【地球の創造】
これが創造の始まりとされ、外側へ向かう力=宇宙の膨張、排出として描かれる。これはビッグバンを指していると考えられる。’Itmは動くために自らの分身RA(ラー)として「現れた」。どこに現れたかは描かれていないが、RAが創造神としての役割を持っている以上、地球に現れたと考えればいい。つまり、RA以前の’Itm、Nn(とNwnt)は地球創造以前の話になる。スピリチュアルの概念からすれば宇宙的な存在だということになる。Raは’Itmの分身として、Nnからのエネルギー…おそらくは宇宙的なエネルギーを宇宙の秩序に従って放出する存在だ。RAは’Itmの分身だから、0=1=1が成り立つことになる。
このあとRAは同じように「分身として」、男性として表される大気の原理šw(シュー)と女性として表される火の原理Tfnwt(テフネト)を生み出す。彼らは’Itm=RAから「分裂して生成された」。地球上に於いては三柱の神が誕生したことになるが、1=2となる。ここから神々=原理は「子」として生み出されていく。これ以降は人間と同様に、親の男性性と女性性を使って生み出されることになる。生物学みたいになってしまうが、1柱の神は男親の中にある男性性と女性性、女親の中にある男性性と女性性を持って生まれることになる。誕生に当たっては4つの要素をすでに含んでいることになるのだ。
【創造の中での男性性と女性性】
šwとTfnwtはGb(ゲブ)とNwt(ヌウト)、それぞれ大地と天空の原理もしくは神という子供を生む。そしてこの二柱の神は夫婦となり、’Ist(イシス)、Wsir(オシリス)、Nbt-Hwt(ネフティス)、Sth(セト)の四兄妹を生む。カイロ博物館にあるペタモンのコフィン・テキストで「私は2に変わる1 私は4に変わる2 私は8に変わる4 そのあと私は1」という数学について描かれたものがあるが、創造はまさにこの通り行われたのだ。
0=1=1=2=2=4… Nn=’Itm=RA=šw+Tfnwt=Gb+Nwt=’Ist+Wsir+Nbt-Hwt+Sth
0=2=2=4=8=16… 神々の結合した男性性と女性性の数はこうなる。