映画やアニメでは、トカゲやイモリ、毒草などが入った大きな釜を「イーヒッヒッヒ」と高らかに笑いながらかき混ぜて、怪しげな呪いの毒薬を作っている魔女の姿が欠かせません。
どうしてこんな姿が有名になったのかというと、確かに昔の魔女たちは大きな釜で薬草を煮詰めていたから、という事実があります。ただその釜で煮られていたのは、毒草でもヒキガエルでもなく、ヨモギなどのマイルドな薬草がほとんどでした。そしてその用法も、腹痛を治めたり、咳止めに使ったりするものがほとんどだったようです。それでも、薬草を家の中で煮詰めるのは危険ですから、屋外に釜を持ち出して煮詰めていたのは、理にかなっています。
そしてまた、高度なハーブ術に長けていた魔女の中には、ハシリドコロや毒にんじんといった危険な薬効成分が入っている薬草を駆使する者もいました。こうした薬草は、まさに毒にも薬にもなるものばかりで、魔女たちの匙加減一つで、長年の激しい痛みから解放されたり、逆にうっかり服薬量を間違えて幻覚を見て錯乱したり、という結果も待っていました。そうした状態を見た人たちが「魔女の呪いだ」と思ったとしても、責められないでしょう。
医療へのアクセスが容易になった現代では、こうした魔女の薬はすっかり出番が少なくなりました。それでも、魔女は不思議な力で人を呪うことができる、という説は根強いようです。
確かに、魔女は究極の事態になれば、人を呪うことはあります。それは自分が得をしたいからとか、気に入らない奴がいるから、といったお伽話のような理由からではなく、虐待されている幼児を助けたいとか、レイプされた女性に正しい司法の助けが届くように、といった願いから実行することがほとんど。そして、その呪いの責任は、全部被る覚悟で実行します。くれぐれも、気に入らない人がいるから呪ってやりたい!なんて軽々しく考えるのはやめましょう。
(ヘイズ中村
魔女・魔術師&占い師・執筆家
中学生時代から研究と修行の道に入ったのに神秘性の欠片もない神秘家
HP https://www.fortunamoon.com)