古代エジプトの人々がミイラを作って来世に備えたのを笑うのは、現代を生きる私たちの誤解なのかもしれない。私たちの宇宙はビッグバンによって生まれ、時間の中で膨張を続けているとされる。だが、やがてその膨張はビッグクランチという反転として縮小を始める。
このビッグクランチ以降の世界で、宇宙が元の点に向かって遡らないと誰が証明できるだろうか。ブラックホールに落ちた情報に関するパラドックスでは、さまざまな説が議論されている。「情報」は量子力学ではどんな変化が起きても保存されると考えられている。スティーヴン・ホーキング博士は情報は失われると考えたが、ホログラフィック理論の出現に伴って情報は消えないと同意した。だとすると、ビッグクランチ以降の宇宙でも、私たちの存在=情報が何らかの形で繰り返される可能性がある。
その時に再び命を取り戻し、ゼロに戻る特異点のどこかで生きるときに備えたのがミイラなのではないだろうか。古代エジプトの『コフィンテキスト』の第130にはこう書かれている。
「何百万年もの間、区分された創造があったのち、創造の前の混沌が再び戻ってくるであろう。完全なるもの(Atm)とアウス=ラーだけが残る。空間と時間において、もはや隔てられない」
最終的に私たちを含む宇宙がアウス・ラー(ラーの源、ラーの力)に戻るとしても、宇宙の膨張局面での人生を仮に「表」とするなら、収縮の局面で「裏」の人生を生きることで地球の二元論は完全なバランスを持つことになるのではないだろうか。
意識すればすべてのものが二つに分類できる。分類されたものはさらに二つに、さらに二つに… という形で、素粒子まで分解していくことが可能だ。この仕組みがわかれば、自分が悩んでいる事柄に対してざっくりと二つの選択肢を作ることができる。あとはどちらの道が自分の魂、自分の内側からの声によって選ばれるものかを感じ取ればいい。私たちが生きている世界が二元論の「2」の累乗で構成されているなら、二つの選択肢を次々に遡っていけば答えに近づくのだ。
言ってみれば心の中にある全ての問いは、宇宙の大きな流れの中に含まれた「小さな流れ」だ。複雑で難しいと感じられる問題も、宇宙全体との関係性を意識することで単純化できる。問いの中心は何なのかを見出すこともできるだろう。日々の課題や選択肢を二つに分けること、その選択の結果を振り返ることで、目標への道筋が見えてくる。問題を分解して単純化するという作業の繰り返しがコツだと言える。私たちは最終的に、より大きな存在の一部としての自分を見出すことになる。
私たちが住む宇宙という生命は、時間と空間の大きな流れの一部を構成している。時間と空間はいろいろな層を通して繋がり、「自分」という楔を通して一つに結びつく。地球を含む宇宙と人間の命には深い関連があるのだ。