古代エジプトと言えば、ピラミッドや王家の谷、数々の神殿やオベリスク、ミイラなどで知られる。フランス人のジャン・フランソワ・シャンポリオンがロゼッタ・ストーンに刻まれたヒエログリフの解読に成功したことがきっかけとなり、当時の生活や考え方を知ることができるようになった。
ヒエログリフはメソポタミア文明の楔形文字、中国の甲骨文字と並んで世界最古の文字体系とされている。だとしたら、その神話も現存する中では世界最古かそれに近いはずだ。ヒエログリフの研究が進んだことで、その宇宙観も明らかになっている。ヘルモポリス神話…イシスやオシリスが登場する創世神話で、最初に存在していたのは混沌の海、原初の海だった。シュメール神話や日本における天地開闢、中国の『淮南子』も同じで、混沌の海の中に存在するのは男性原理、女性原理の原始の形だ。
エジプト神話には地域や時期によってさまざまなバージョンがあるが、ある神話体系での世界の成り立ちは以下のようになる。また「神」と訳されるヒエログリフの「ネチェル、ネチェルウ(複数形)」という単語は、地上のある要素を切り取っている。
混沌、宇宙の海=男性として表されるNn(ヌン)+女性として表されるNwnt(ヌウネト)
Nn Nwnt
※このふたつを合わせたときにもNn(ヌン)と呼ばれる
※ある要素が男性性と女性性に分かれて信仰されるのは、古王国時代からの特徴でもある。
Nn(ヌン)の中に、Atm(アトム、アトゥム、アテム)などと呼ばれる意識ができた。
Atm
アタムは自らの分身・Ra(ラー)としてこの世界に現れた(意識だけではなく「動き」を獲得した)。
Ra
創生神として単独での創造を開始。Sw(シュウ)とTfnt(テフヌト)をさらに分身として作った。シュウは乾燥した大気や空間、テフヌトは湿気(=最初の風の要素、最初の火の要素)。
Sw Tfnt
シュウとテフヌトの子供、大地Gb(ゲブ) 、 天Nwt(ヌウト)が生まれた。
Gb Nwt
Wsir(オシリス)、Ast(イシス)、Sth(セト)、Nbt-Hwt(ネフティス)が生まれた。オシリスとイシス、セトとネフティスの夫婦となる。
Wsir Ast
Sth Nbt-Hwt
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