イナンナとドゥムジ

365日 光と闇の暦 3月20日 愛と戦の女神と羊飼いの神 イナンナとドゥムジ

春分の日(日本)・オスタラ(ゲルマン春祭)

今日の光の神:イナンナ(シュメール神話・愛と戦と天の女神)

 イナンナ(𒀭𒈹/Inanna)は古代メソポタミアで最も崇拝された金星を象徴する女神で、愛、豊穣、戦争を司るとされていました。彼女は天界での栄光を手にしただけでは満足せず、冥界も支配しようと死者の国に降りていくことを決めます。七つの門をくぐるたびに王冠、首飾り、衣服…と、ひとつずつ身につけていたものを剥ぎ取られましたが、彼女は歩み続けました。妹でもある冥界の女王エレシュキガル(𒀭𒊩𒌆𒆠𒃲/Ereshkigal)の前に裸で立ったイナンナは死を宣告され、三日三晩杭に吊るされた屍となってから甦りました。

今日の闇の神:ドゥムジ(シュメール神話・羊飼いの神)

 ドゥムジ(𒌉𒍣/Dumuzi)は、草原を渡る風のように自由で美しい羊飼いの神です。イナンナの心を射止め夫となったドゥムジは祝福された存在だったはずでした。ですが冥界から帰ってきたイナンナは、玉座に座り妻の不在を悲しむ様子もないドゥムジの姿を見ます。冥界から戻ってきたイナンナですが、冥界の掟として身代わりが必要でした。イナンナの冷たい視線がドゥムジを指したとき、彼の運命は反転します。ドゥムジは一年の半分を冥界で過ごすことになり、その死と再生のリズムが季節の循環そのものとなったのです。

光と闇

 イナンナとドゥムジの神話はペルセポネとハデスの物語より千年以上古く、季節の由来を説明する神話の原型です。二人の関係性は単純な加害被害というものではありません。イナンナは誰かに強いられたのではなく自らの意志で冥界へ下降し、ドゥムジを差し出したのもまた彼女の決断でした。愛した夫を犠牲にして地上にいることを選んだ女神と、その代償として永遠に生死の世界を行き来することになった夫。二人の関係は「愛とは何かを差し出すこと」「再生には必ず喪失が伴う」という厳しい真理をに突きつけ他ものだと言えます。

この日のテーマ:何かを得るために何を手放すか

 春分は光と闇のバランスが完全に調和する日です。これから光の時間が長くなっていく転換点で、あなたは何かを手放す覚悟があるでしょうか。イナンナは冥界を征服するために自らが築いた天界でのの威光を、地上に戻るために最愛だったはずの夫を手放しました。あなたも新しい季節―新しい自分を望むなら、今までの自分を作ってきた何かを差し出す必要があるかもしれません。それはもう役に立たない古い習慣かもしれないし、誰かとの心地よい関係性かもしれません。春の光は、ただ待っていれば降り注ぐわけではないのです。

関連記事一覧