聖パトリック

365日 光と闇の暦 3月17日 蛇を追う者、贄を求める者 聖パトリックとクロム・クルアハ

聖パトリックの日(アイルランド)
今日の光の神:聖パトリック(アイルランドの守護聖人)

 聖パトリック(Naomh Pádraig/St. Patrick)はアイルランドにキリスト教を広めた宣教師・守護聖人です。ブリテン島のローマ系キリスト教徒の家庭に生まれましたが、16歳でアイルランドの海賊に拉致されて羊飼いとして奴隷生活を送りました。深い信仰を得た彼は脱出に成功しますが、聖職者となって再びアイルランドに戻り、布教に一生を捧げました。パトリックには「アイルランドからすべての蛇を追い払った」という伝承がありますが、実際には氷河期以降蛇は生息しておらず、異教という「蛇」を一掃した歴史を象徴するものだと考えられます。

今日の闇の神:クロム・クルアハ(古アイルランドの荒ぶる神)

 クロム・クルアハ(Crom Cruach)は、キリスト教が広まる以前のアイルランドで、豊穣と引き換えに凄惨な生贄を求めたとされる神です。「血の曲がった者」または「塚の曲がった者」という意味で、マグ・スレフト(平伏の平原)には黄金に覆われた石像と12の青銅の偶像があったといいます。中世の記述では、人々は毎年サウィンの祭りで最初に生まれた子供の3分の1を捧げ、その血を石像に振りまいたといいます。パトリックが手にした「イエスの杖」の一撃によって像は砕け散って地中に沈んだとされますが、この神の本来の性質は勝者によって塗り潰されています。

光と闇

 聖パトリックとクロム・クルアハの対立は、新旧の信仰の衝突を象徴しています。クロム・クルアハに関する記述はすべてキリスト教化後に書かれたもので、生贄の話も異教を貶める誇張だという可能性もあるのです。敗れた神々やその歴史は、勝者に都合のいいように書き換えられてしまいます。パトリックは蛇を追い払った英雄として讃えられますが、追われた側の主張は歴史に残りませんでした。

この日のテーマ:自分の中の「蛇」を誰が殺したか

 聖パトリックが追い払った蛇は、他人に合わせるためにあなたが捨ててきた剥き出しの感情や欲望を例えたものでもあります。社会に合わせて品行方正に振る舞うために、自分の中にある荒々しく美しい生命力を、よくないものだと断罪してはいないでしょうか。殺された蛇は死んだのではなく、ただ沈黙しているだけかもしれません。外から押し付けられた「正しさ」に自分を合わせるのをやめたとき、その蛇は再び動き出してあなたを本当の意味で自由にする鍵となるかもしれません。

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