ファイストスの円盤とは?たった1枚の粘土板が解読できない理由
主要な仮説
それでも学術論文から素人の投稿まで、数十件に上る「解読」が発表されてきた。主な仮説を見てみよう。
| 仮説 | 内容 | 根拠 | 問題点 |
|---|---|---|---|
| 宗教的な祈祷文 | 女神への讃歌や儀礼テキスト | 繰り返しパターンの存在 | 検証不能 |
| 暦・天文の記録 | 農事暦や祭礼カレンダー | 区切りの数(約30)が月に対応? | 推測の域を出ない |
| 音節文字による言語記録 | 何らかの言語を音節で表記 | 45種類は音節文字として妥当 | 言語が特定できない |
| 偽物説 | 20世紀初頭の捏造 | 発見状況の曖昧さ、類例の不在 | 科学的調査で否定傾向 |
偽物説について
発見から100年以上経っても同じような遺物がまったく見つからないため、一部には近代の捏造ではないかと疑う声がある。発見者ペルニエのレポートには曖昧な点があり、発掘した時の写真も残っていない状況が疑惑を呼んでいる。
だが粘土の成分分析や熱ルミネッセンス法による年代測定で、円盤は古代のものである可能性が高いとされた。疑いは完全には晴れないものの、現時点では本物と見なすのが主流だ。
解読は可能なのか
正直に言えば現状ではほぼ不可能。可能性があるとすれば、新しい出土品や資料が見つかる以外には考えにくい。だが100年以上の発掘調査では、類例は一点も見つかっていないのが事実だ。
もしかすると、この円盤は「たまたま1枚だけ残った」のではなく、そもそも1枚しか作られなかったのかもしれない。何か特殊な目的で、この円盤だけのために記号体系が考案されたのだとすれば、「解読」という概念自体が当てはまらない。
謎は謎のまま
この円盤は未解読文字の中でも異質の存在だ。他の未解読文字は「資料が少ない」「言語がわからない」といった問題を抱えていても、複数のテキストを比較することができる。だがファイストスの円盤は比較対象がゼロ、孤立した1点の遺物だ。
だからこそ円盤は人々の想像力を刺激し続けるのかもしれない。何が書いてあるのかわからないため、却ってあらゆる解釈が可能に思えてしまう。だが、学術的に誠実であろうとするなら「わからない」と言うしかない。それが120年経った現在の結論だ。
参考資料・リンク
- Godart, L. (1995) “The Phaistos Disc: The Enigma of an Aegean Script” ITANOS Publications
- Duhoux, Y. (2000) “How Not to Decipher the Phaistos Disc” American Journal of Archaeology
- Heraklion Archaeological Museum (公式) https://heraklionmuseum.gr/
1 2