スティーヴィー・ニックス

Talk to Me ─ リアノンに呪われた女 スティーヴィー・ニックス

「Talk to Me」破ってほしかった沈黙

 1985年、スティーヴィー・ニックスのソロ3作目『Rock a Little』から「Talk to Me」がリリースされた。クロノピン地獄に入る直前のことだ。この曲はニックス自身が書いたものではなく、チャス・サンドフォードが作った曲をプロデューサーのジミー・アイオヴィンが持ち込んだ。

 電話が鳴ると相手の様子がおかしくなり、何かが起きているのは明らかなのに、何も話してくれない―。秘密を抱えた恋人に「話して」と懇願する歌詞は、スティーヴィーの深層心理を映し出すものだった。彼女は当初この曲をうまく歌えず拒絶反応を示した。だがある夜、隣のスタジオにいたドラマーのジム・ケルトナーが聴衆になったことで魔法が解けた。

 彼女は「誰かに向かって歌うことで、やっとヴォーカルが録れた」という―他者と繋がることで声は解放されたのだ。スティーヴィーがリンジーに―もしかしたら自分自身にも―叫び続けていた「Talk to Me」という願いが、ようやく形になった瞬間だった。

飛び立ったリアノンの鳥

 そして2025年。二人がフリートウッド・マックに参加する前に組んでいた『バッキンガム・ニックス』のアルバムが52年ぶりの再発を果たす。その知らせは、スティーヴィーとリンジーが同時にインスタグラムで告知するという、ファンにとっては奇跡のような形で届けられた。

 10月には、ポッドキャスト番組『Song Exploder』に二人揃って出演。インタビュー自体は別々に行われたものの、スティーヴィーは「昨夜もリンジーと話した」と話している。別離から約50年—お互いを愛憎の檻に閉じ込めてきた二人が、ようやく一つの物語を共有するために歩み寄ったのだ。

 「私たちの関係は困難の連続だったけれど、それ以上にファンタスティックだった。試練に耐える価値があるほどに」

 リアノンの3羽の鳥、アダル・リアノンは「死者を目覚めさせ、生者を眠らせる」と言われる。スティーヴィーの音楽も同じだ。50年前の曲が今も聴かれ続け、聴く者の中の何かを目覚めさせる。スティーヴィーは呪われたのではなく、選ばれたに違いない。リアノンはスティーヴィーという類稀なる器を介して、今も世界に歌という名の鳥を放ち続けている。

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