本気で恐ろしい拷問シリーズ 悪趣味の極み!ファラリスの雄牛
拷問器具の名前を聞いて、恐ろしさがすぐに伝わるものとそうでないものがある。「鉄の処女」や「串刺し」は聞いただけで背筋が凍るが、「ファラリスの雄牛」と聞いてピンとくる人はどれだけいるだろうか。雄牛? 牛に何かされるの? 角で突かれる?踏まれる?いやいや、そんな生易しいものではない。
紀元前6世紀、古代ギリシアのシチリア島にファラリスという僭主がいた。僭主というのは「正当な手続きを経ずに力で権力を握った」支配者、要するにやりたい放題できる暴君だ。このファラリスが「何か目新しい処刑法はないものか」と考え、アテナイの真鍮鋳物師ペリロスに新しい処刑器具の製作を命じた。
ペリロスが作り上げたのは等身大の雄牛の像。全身が真鍮で精巧な芸術品のようだった。だが内部は空洞で、胴体の一部が開いて人間が入れるようになっている。…もうお気づきだろうか。
罪人を牛の腹の中に閉じ込めて、下から火を焚く。真鍮は熱伝導率が高い。炎に炙られた牛の腹は徐々に高温になり、中に閉じ込められた人間は文字通り蒸し焼きになる。一説によると、内部の温度は450度を超えたとも…。通常の焼死なら煙を吸って意識を失うこともあるが、この装置には牛の口に管が仕込まれていて、そこから空気が入る。つまり、意識を保ったままじわじわと焼かれ続けるのだ。
さらに悪趣味なのは「音響装置」だ。苦悶する犠牲者の絶叫が管を通って変調、外にいる人間には本物の牛がうなるような声に聞こえるという。ペリロスはファラリスに言った。「犠牲者の叫び声は、パイプを通して優しく哀れな牛のうなりのようにお耳に届くでしょう」…芸術的センスの使い方を完全に間違えている。
この悪魔的な発明に対し、ファラリスはどう反応したか。「ではその効果を確かめさせてもらおう」、はいお約束。ファラリスはペリロスを牛の中に入れて火を点けた。最初の犠牲者は製作者本人だったのだ。報酬を期待していたペリロスの気持ちを考えると、残酷を通り越して哀れですらある。
だが因果応報とはよく言ったもの。紀元前554年に反乱によって失脚したファラリスもまた、自らの名を冠したこの牛の中で焼き殺されたと伝えられている。最初の犠牲者は製作者、最後の犠牲者は依頼主。この雄牛は、関わった者すべてを呪うかのように飲み込んでいったのだ。
ただしファラリスの雄牛が本当に使用されたかどうかについては、歴史家の間でも議論されている。実際に使われた記録は乏しく、模倣品すら現存していないからだ。一部には「十分な火力が得られず、実用的ではない」という指摘もある。しかし、だとしても「こんな装置を思いつく人間がいた」という事実だけで十分に恐ろしい。
人を焼き殺しながら、その悲鳴を音楽のように楽しむ。人間の想像力は、時として底なしに残酷な方向へ向かうことがある。