線文字A

線文字Aとは?解読された線文字Bとの違い、ミノア文明最後の謎

 完全な解読はできていないが、部分的に判明していることはある。

数字と計量システム

 線文字Aには数字を表す記号-1、10、100、1000を表す記号と、分数を表す記号が確認されている。穀物や液体の計量単位も推定されている。

内容の傾向

 出土資料のほとんどは行政・経済的な文書と考えられる。物品のリスト、数量の記録、取引の記録などだ。宮殿の官僚機構が在庫管理や交易記録のために使っていたと推測される。宗教的・儀礼的な銘文と思われるものも一部あり、石の献納品に刻まれた短い銘文などがこれに該当する。

特定の語句

 いくつかの単語の意味は推定されている。例えば「ku-ro」という語は記録の末尾で数字の合計とともに現れるので「合計」という意味である可能性が高い。線文字Bにも似た語があり、この説を支持する証拠となっている。

主要な仮説と解読へのチャレンジ

 ミノア語の系統についてはいくつかの仮説が提唱されてきた。だが現在の学界ではミノア語と既知の言語との関連はほぼ否定もしくは証拠不十分とされている。

仮説提唱者・系統根拠問題点
アナトリア諸語関連説ルウィ語などとの関係地理的近接性音韻対応が不十分
セム語派関連説フェニキア語などとの関係交易の接触文法構造が一致しない
先ギリシャ基層言語説ギリシャ語以前の地中海言語地名の語源実証が困難
孤立言語説どの語族とも無関係対応がない事実解読の手がかりがない

 解読に成功したと主張する研究者は定期的に現れるが、線文字Bのように学会で広く認められた解読は未だに出てきていない。

線文字Aの現在 ロゼッタ・ストーンを待ちながら

 線文字Aの解読には、大きく分けて2つの可能性がある。一つはバイリンガル文書の発見だ。もしミノア語と、例えば古代エジプト語やヒッタイト語など既知の言語で同じ内容が書かれた資料が見つかれば、ロゼッタ・ストーンと同じ役割を果たす。発掘調査が進めばそんな資料が出てくるかもしれない。もう一つは新たな資料が大量に発見されること。現在の約1400点という資料数では分析するには少なすぎるのだ。もし宮殿の書庫のようなものが発見されれば、パターンの抽出が大幅に進む可能性がある。

 しかし、どちらも不確定要素に依存していて「待つ」しかない状況だ。線文字Aはヨーロッパ最古の文明が残した「まだ開かれていない扉」だ。その向こうには「ミノア人が何を考え、何を記録し、どんな言葉を話していたか」という、失われた世界が眠っている。

参考資料・リンク

  • Godart, L. & Olivier, J.P. “Recueil des inscriptions en linéaire A” (線文字A碑文集成)
  • Younger, J.G. “Linear A Texts and Inscriptions” (オンラインデータベース) https://people.ku.edu/~jyounger/LinearA/
  • DĀMOS: Database of Mycenaean at Oslo https://damos.hf.uio.no/
  • Packard, D.W. (1974) “Minoan Linear A” University of California Press

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