ゲーテアーヌム

霊的世界最大の光と闇 シュタイナーとヒトラー

 ドイツ発祥の「シュタイナー教育」という言葉を知っている方は多いのではないかと思います。オーストリア人の哲学者ルドルフ・シュタイナーが生み出した「自由への教育」とも言われる教育方法で、子供たち一人一人を尊重し、その個性を伸ばしていこうとするものです。身体を動かして意志の力を強める0-7歳、感情を育む7-14歳、思考を育む14-21歳という三つの時期を大切に考えているため、日本にも「自由ヴァルドルフ連盟」というシュタイナー教育の国際連盟に認められた一貫教育の学校があります。

 身体、感情、思考。この三つのワードでピンときた方はスピリチュアルやメタフィジックスに興味のある方だと思います。シュタイナー教育を知らなくても、神秘思想家としてのシュタイナーはご存じかもしれません。『アカシャ年代記より』でアカシック・レコードを広めた人でもあります。シュタイナーは農業や医療、教育の大切さとともに、目に見えない世界の大切さも説いていました(この医療部分の理念から生まれたのが化粧品会社のWeledaです)。

 シュタイナーはいわゆる透視能力者としても知られ、晩年には人智学協会(普遍アントロポゾフィー協会)を創設しました。『いかにして超感覚的世界の認識を獲得するか』『いかにして高次の世界を認識するか』といった著書は日本の精神世界ブームの時期に広く読まれ、『秘教講義1-4』は現在でも霊的世界を探求する人たちに深遠な教えを与えています。

 そんなシュタイナーを激しく敵視していたのがナチス総統のアドルフ・ヒトラーでした。ヒトラーはシュタイナーの思想をフリーメーソンよりさらに厄介なものだと考え、シュタイナーを「唯一抹殺したい人間」と考えていたと言われています。シュタイナーはミュンヘン駅でナチスによる暗殺未遂に遭っています。また、シュタイナーが建設した人智学の本拠地・ゲーテアーヌムは、シュタイナーが講堂で800人の聴衆を前に講演を行っている間に放火されてしまいます。この犯人は狂信的なナチス信奉者でした。彼はナチス創設者の一人、ディートリヒ・エッカルトの遺言だった「ゲーテアヌムを焼き払い、シュタイナーとそのサークルの精通者を炎の中で殺せ」という言葉を忠実に実行しようとしたのです。

 ディートリヒ・エッカルトはヒトラーの霊的指導者で、ヒトラーは『我が闘争』の中で彼を称して「その著作、思想、そして最終的には行動によって、生涯を私たちの同胞のために捧げたあの人物を、最も優れた人々のひとり」だと言っています。ナチスの前身とも言えるトゥーレ協会という秘密結社のリーダー的存在であり、ヒトラーたちが目指したのはこの協会の思想にある霊的な世界の実現でした。

 ヒトラーが予言者だということは広く知られていますが、その対極にあって驚異的な霊的能力を持っていたのがシュタイナーで、「もしこの組織が大きな力を持つようなことがあれば中部ヨーロッパに大きな被害をもたらす」など、ナチスには反対の立場で発言を繰り返していました。シュタイナーは晩年「空虚なフレーズ、嘘やスローガン、常套句が社会にはびこり、人々はいつか感覚が麻痺してその空虚なフレーズの中に取り込まれていってしまうだろう」と予言しています。

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