《中国怪談地図》雲南の都市伝説と怪談
中国南西部、タイ、ラオス、ミャンマーと国境を接する山岳地帯、雲南省。数多くの少数民族が暮らすこの地域には漢族とは違った信仰が残り、精霊たちの物語が残っています。かつて放映されていた『世界ウルルン滞在記』では石川さゆりさんや遠野なぎこさんが訪れていましたが、山の斜面に作られた村までの急峻な道は確実に大変そうで、でも画面越しにもその景色の雄大さに惹かれました。今回はそんんな雲南にまつわるお話です。
蛇神を呼ぶ儀式
雲南の村では、豊かな水をもたらす守り神として白蛇が祀られています。ペー族やナシ族、ハニ族では、水辺や田畑のそばに小さな祠を設け、年に一度、黒米や酒、時には鶏の血を供えます。祭壇には蛇の文様が描かれた布がはられ、村人たちは白蛇との“交わり”を祈ります—それによって作物が育ち、村が守られると信じているからです
ナシ族やペー族、ハニ族などの一部では、病や事故で魂が体から離れた時などに招魂儀式が行われます。蛇の絵を描いた布がかけられた祭壇に白い石・貝殻などを捧げ、太鼓と竹笛の響きの中、ナシ族ならトンパ僧などのシャーマンが祈りを捧げ、蛇の精霊の力を借りて魂を呼び戻そうというものです。
蛇の精霊は守り神として大切に祀られる存在ですが、契約を破ったら…。村には災いがもたらされることになります。不作、病、家の断絶…。この地域では忌み言葉を避ける習慣があり、霊的存在や不幸について語られることはありません。ある古老はこう語っています。「詳しく言わないほうがいい。名前を出すと来るからだ」。
白蛇に魅入られた若者
10年以上前、中国の掲示板に雲南の白蛇にまつわる書込みがありました。
「村に戻ってきた青年が儀式に参加したら、白蛇が見えたんだって。それから夜になると蛇が話しかけてくるって言って、人と話さなくなった。最後は山にこもるようになったって」
「その人の様子を見に行った人に聞いたんだけど…。小屋の前は蛇の抜け殻だらけで、お札みたいな木札が部屋中に吊されてたって」
やがて彼は小屋からも姿を消したと言います。それから彼の姿を見たものはいません。
民族呪術と蛇の信仰
雲南では、白蛇は豊穣と死を司る存在として、ペー族やナシ族、ハニ族の民間信仰に現れます。水源や田畑に棲むとされ、目撃した者は必ず供物を捧げる習わしがあります。村によっては、祭壇に蛇の模様を描いた布をかけ、黒米や鶏の血を供える儀式も残っているといいます。蛇は単なる動物ではなく、精霊と人間をつなぐ媒介であり、契約の相手なのです。
雲南の山中で囁かれる警告
この地域では「山で白蛇を見たら、目を逸らさず、その場から動くな」と言われています。逃げれば追われ、無視すれば祟られるのだと言います。見つめ続ければ、相手が契約を望んでいるのか、それともただの通りすがりなのかがわかる、と。契約を望む白蛇なら足元をゆっくりと這い、こちらを見つめてくる。これは加護を与えようという申し出だといいます。単に通りすがりの白蛇は、距離を取り続けてそのうちどこかへ消えていくのだそうです。
いつか雲南を訪れ、霧の山道で白い蛇と目が合ったら―あなたも蛇神の加護を受けられるかもしれません。それは祟りと紙一重ですが…。