プラトン像

プラトンによる「魂の育成」方法とその哲学

2. 学科による調律

 プラトンの学校・アカデメイアでは、数学、音楽、天文学、倫理などが魂の中に秩序と調和を作ると考えられていました。図形や比率から「不変の秩序」を身につけ、旋律やリズムの調和を通じて感情や気質を整え、星々の運行を観察して宇宙を理解する―こういった教育には目に見える世界を利用して法則を体得し、個々の内側にも調和を育てるという目的がありました。

3. 愛の階梯(ἀνάβασις ἔρωτος/アナーバシス・エーロートス)

 『饗宴(Symposion/Συμπόσιον)』では、エロース(愛)について書かれています。愛の対象を広げていくことで魂を鍛え、最高度の現実に触れるという流れです。

第一段階
ἔρως σωματικός/エーロース・ソーマティコス 肉体的な愛
特定の個人の肉体的美に惹かれる
第二段階
πάντων σωμάτων κάλλος/パーントーン・ソーマートーン・カッロス すべての身体の美
多くの肉体に共通する美しさに気づく
第三段階
τὰ τῆς ψυχῆς καλά/ター・テース・プシュケース・カラー 魂に属する美
内面の美、徳や魂の美しさを愛する
第四段階
τὰ ἐπιτηδεύματα/ター・エピテーデウマタ 人間の活動
μαθήματα/マテーマタ 学問や知識・制度
法律や学問など、人間活動全体にある美を愛する
第五段階
τὸ καλόν/ト・カローン 美そのもの
τὸ ἀγαθόν καθ’αὐτό/ト・アガトーン・カタフトー 善そのもの
「美そのもの」「善そのもの」という普遍的な原理に目を開く
最終段階
θέα τοῦ καλoῦ/セア・トゥー・カローウ 美を観る
ἰδέα τοῦ ἀγαθοῦ/イデア・トゥー・アガトゥー 善のイデア
善・美・真のイデアそのものを魂が直接見る
プラトン流の訓練方法
日常で問答をする
ソクラテスのように「なぜか」「これは本当か」と疑問を持つ。思い込みを壊し、魂の奥に眠る記憶を呼び覚ます練習。

数・音楽・星の秩序を体に染み込ませる
図形の比率を解く、簡単な音階や和音を感じる、星座や月の運行を観察するなど、宇宙の調和を感覚で学ぶ。
宇宙の秩序を感覚に刻み、自分の内側に調和を映す訓練。

愛の対象を段階的に広げる練習
誰かの外見に惹かれら「なぜそれが美しいのか」「同じように美しいものは他にどこにあるか」考えてみる。
「愛の階梯」の実践となる。

一日を振り返る
寝る前にその日一日の自分の言動や感情が理性・気概・欲望のどこから出てきたかを考える。
魂の三部分が調和する「内なる正義」を育てる練習。
最後に

 プラトンの霊的理論には「宇宙全体の秩序・アニマ・ムンディと一人一人の魂が同じ性質を持つ」という前提があります。ですので、まずは目に見える世界の法則や秩序を理解すること、自分自身の状態を知ること練習が大切になってきます。プラトンの哲学とは、単なる知識的な思索ではなく魂の鍛錬の道を意味していたのです。

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