五行と漢方

意識のマニュアル ─ 古代中国 天のリズムとの調和

 古代中国の霊的な哲学と言えば何と言っても道教が有名だ。数多の争いと陰謀の歴史だった古代中国の人々は、自分たち人間を天地の秩序の中に生きる存在と捉えていた。彼らは意識という気の流れを節奏、リズムという知性で表現した。

 では黄老道家・陰陽五行・太極思想などの体系が、現在のスピリチュアルという文脈ではどう解釈できるのだろうか。その「身体と天地との調和」について考えてみよう。

天と身体の共鳴装置

 人間が天(宇宙)と地(自然)の間にあるものだという視点は『黄帝内経』で顕著に見られる。気・血・経絡・五臓はすべて天体の運行リズムと共鳴する器官として理解され、身体の隅々にまで天のリズムが流れ込んでいるとされた。「中国人の文化は、外的秩序と身体的感覚を一致させる霊性を宿していた」と講義番号GA354でシュタイナーが述べたように、インドの内観中心文化と逆の方向性だ。

道(タオ)とは何か

 道家思想における「道(タオ)」は存在の根源原理であると同時に、意識が自己崩壊しないようにする方法論でもある。老子は「道は空であり、用いて尽きず」と言ったが、これは言語や思考すら空であり、どれだけ活用してもしきれるものではないという思想だ。シュタイナーが言う「思考の硬直が霊的退化を招く」という指摘は、まさに老子の言う「空」と関連している。思考はその時々で変化すべきものであり、一つの思考に凝り固まることは空を活用できていないという哲学だ。

 古代中国の人々は悟りや形を最上位に置いて求めたというわけではなく、絶えず循環する気の道筋を見ようとしたのだろう。気の道筋は、意識の導管だと言える。気を見ようとすることで、結果的に自分自身の意識を認識することに繋がるのだ。

陰陽と五行で表されるバランス

 意識は元々「陰=沈黙・収縮・内在」と「陽=発語・拡張・外化」という二つの相反する力の間を移ろうように出来ている。これを説明しようとしたのが陰陽理論だ。そして木・火・土・金・水から成る五行は、単に自然分類を表すだけでなく「五つの状態」を表している。

 例えば木は芽吹き・拡張・意志、火は燃焼・伝達・情動、土は安定・統合・熟慮、金は剪定・判断・収束、水は沈潜・再構築・無意識など、意識を五つに分類することもできる。木火土金水のそれぞれが陰陽の面を持ち、木の陽から順番に甲、乙、丙、丁、戊、己、庚、辛、壬、癸という十干で表される。

 五行は時間の流れと意識を象徴し、どれが大切というものではない。それぞれの状態を自覚することで、私たちは偏りのない状態を認識できるようになっていく。

呼吸・歩行・観察

古代中国における霊的な方法論には、呼吸・身体操作・観察という要素が不可欠だ。

呼吸:鼻から静かに吸い、丹田に気を落とす。吐くときは長く、音を立てずに気を外へ広げる。
歩行:左右同じくらいの歩幅で歩きながら、足の裏と地面の感覚に集中する。
観察:何を見るかではなく、見るという行為そのものがどう起きているかを感じる。

 気を練ると言う言葉があるように、身体感覚を使った太極拳や気功なども中国の霊性に通じる。激しい動きではなくゆっくりと身体に意識を合わせることで、自然と身体が調和していくのを感じられるようになるだろう。

宇宙と調和する身体

 古代中国は「身体で宇宙と調和する」方法論を生み出した。言語ではなくリズム、観念ではなく運動で自分自身を自然の中に置いたのだ。この哲学は、ゆったりした時間が取りにくい現代でもっと見直されてもいいのではないだろうか。自然の中に入ることで、私たちはリラックスして本来の自分を取り戻せるかもしれない。

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