二つの世界を隔てるヴェールの向こう側 亡くなってもそばにいる人たち
死はいつから「断絶」になったのか
では、なぜ現代社会で死が「完全な終わり」のように扱われるのでしょうか。
理由の一つには近代医学の発達があります。「心臓の停止」「脳の機能停止」によって医学的に定義されるようになったとき、死はプロセスではなく「瞬間」になりました。もう一つの理由は都市化と核家族化です。かつて死は家の中で起こるもので、看取るのは家族たちでした。ところが現在では多くの人が病院で亡くなり、葬儀社が遺体を扱います。私たちは実際に死を見なくなったのです。
そして唯物論的世界観が浸透していったこと。「意識は脳の産物で、脳が止まれば意識も消える」という説が科学的だとして広まった結果です。しかし実際には、意識と脳の関係は完全に解明されたわけではありません。「意識のハードプロブレム」と呼ばれるこの問題は、哲学者デイヴィッド・チャーマーズ(David Chalmers)が1995年に提唱して以来、いまだに解決されていないのです。
ヴェールの向こうに
死者が「いなくなった」のではなく「肉眼で見えなくなった」だけだとしたら、世界中の文化が何千年も信じてきた「死者は近くにいる」という感覚に、何らかの真実が含まれているとしたら…。
証明することは難しいかもしれませんが、証明できないからと言って存在しないと言い切ることはできません。古代ケルトの人々、メキシコの人々、日本人と古代エジプト人、世界中の人々が感じてきた死者とのコミュニケーション。そこには科学では測れない何かがあるのではないでしょうか。
亡くなった人たちは、ヴェールの向こう側で私たちのことを見ているのかもしれません。そしてそのヴェールが薄くなったとき、ふと気配を感じたり夢に出てきたりするのでしょう。そんなときには小さな声で「おかえり」と伝えてもいいのではないでしょうか。