世界のおまじない図鑑 私たちはみんな何かを信じている
ハムサという手のお守り
邪視除けには「ハムサ(خمسة)」という手のひらの形をしたお守りもあります。アラビア語の5という意味で、そのまま5本の指を表しています。イスラム圏では「ファティマの手」、ユダヤ圏では「ミリアムの手」と呼ばれますが、信仰が異なっても同じ形のお守りがあるのは興味深いですね。
日本にはこの「邪視」という概念、視線で呪われるという発想そのものに馴染みがありません。理由ははっきりしませんが、均質な社会を形成してきた島国と、多民族・多宗教が入り混じる中東や地中海地域とでは、他者への警戒心の高さが違うのかもしれません。
国によって異なる「幸運の招き方」
日本の招き猫
日本で幸運を招くといえば、招き猫が思い浮かびます。商店の入口やレジの横によく置かれていますよね。右手を上げた猫は金運、左手を上げた猫は客を招くとされています。招き猫の伝承としては、江戸時代の井伊直孝の話がよく知られています。世田谷の豪徳寺で猫が手招きをするので入ると、直後に雷雨になったというものです。
西洋の指クロス
欧米では幸運を祈るとき、人差し指と中指を交差させます。試験の前や重要なプレゼンの前などに”Fingers crossed!”(指をクロス!)と言い、指の形を十字架にして神の加護を祈ります。イギリスの国営宝くじのロゴマークにも交差した指が使われています。
招き猫が「待つ姿勢」なのに対して、指クロスは自ら手を動かして祈りを捧げる、より能動的なスタイルと言えるかもしれません。
四つ葉のクローバー
四つ葉のクローバーは日本でも幸運のシンボルになっていますが、元々はケルト文化から来ています。アイルランドの国花は三つ葉のクローバー(シャムロック/Shamrock)です。聖パトリックがキリスト教の三位一体を説明するために三つ葉を使ったことから、クローバー自体が神聖だと考えられるようになりました。そしてクローバーの中でも珍しい四つ葉は特別な幸運をもたらすと信じられています。珍しいものには特別な力があるという考え方は、洋の東西を問わず共通しているようです。
おまじないは効くのか
どのおまじないにも科学的な根拠はありません。塩をまいても悪霊は祓えないでしょうし、青い目玉を身につけても呪いは防げないかもしれません。招き猫を置いただけで売上が上がることもないでしょう。それでも、人はおまじないをやめません。
シカゴ大学の研究で、おまじないのような行動を取った人は取らなかった人に比べて不安が軽くなったという結果が出ています。不確実な状況で何かをすることには心を落ち着かせる効果があるそうです。科学的には無意味でも、心理的には意味があるのかもしれません。
日本人は塩をまき、トルコ人は青い目玉を飾り、アメリカ人は指をクロスさせる。考え方や方法は違っても、悪いことが起ないよう、良いことがあるよう願うのは誰もが同じなのではないでしょうか。
人類はみんな、何かを信じています。