ジェランクン

ジャワ島の禁断降霊術!?籠人形に宿る「ジェランクン」

沈む夕陽と忍び寄る影

 -暖かく湿った空気が肌にまとわりつくような夜。月明りが影を落とすジャワ島の小さな村落では、ジェランクンという竹や籐で編んだ人形を使った降霊儀式が行われているかもしれない。では、ジェランクンとはどんな儀式なのだろうか。

ジェランクンとは何か

 このジャワ島版コックリさんは、竹ひごや筆を使った中国の「扶乩(フーチ)」に影響を受けたとされている。地元の儀礼「ニニ・トウォン」にも似ていて、こういった霊的な方法が混ざり合って生まれたものだという。ジェランクンという名前は、中国語の「菜籠公(ツァイロウゴン)」が語源という説が有力だ。

 多少の違いはあるが、基本的なジェランクンのやり方は決まっている。まず籠やココナッツの殻を木製の柄につけ、布を着せて人形を作る。次に人形に向かって「ジェランクン、ジェランサット、ここに小さな宴がある…」という呪文を唱えると、霊が現れる。「YESなら前に揺れる」「NOなら後ろに」などのルールを決めてから質問すると、人形が動いて返事をする。人形が動く以外にも、手が熱くなったり冷たくなったりする、何かの声が聞こえる、風や匂いが変わる、夢で答えがわかるなども霊からのサインだとされる。霊を呼び出してから人形にペンを握らせ、書いておいた文字や数字を辿ってもらう方法もある―これはコックリさんとほぼ同じだ。

ジェランクンの現在

 ジェランクンをしていたら奇妙な現象が起きたという証言は多い。人形が話した、人形が自分の名前を名乗った、人形が急に重くなって手を引っぱられた、人形を離そうとしても離れなかった…。儀式を正式に終わらせないと取り憑かれ、夜ごとに物音がして夢や幻覚を見たという話もある。若者への精神的な影響があるのではと危険視する声もあり、禁じられた遊びというイメージは強い。

 インドネシアでは2001年に『Jelangkung』、2017年には『Jailangkung』というタイトルのホラー映画がヒットし、ジェランクンは恐怖の題材として定着することになった。若者たちがSNSや動画サイトでジェランクンを行うこともあり、それと同時におかしな現象が起きたという投稿も増えている。ガイドツアーでは「ここはジェランクンの舞台となった場所だ」と説明することもあるようだが、ジェランクンを軽々しく扱うべきではないという声もある。

サンデカラの時間と境界への好奇心

 日本では「逢魔が時」として知られる夕暮れの時間帯は、ジャワ島では「サンデカラ」の時間だ。サンデカラは霊が徘徊しはじめる時間という意味で、子どもが外で遊んでいると危ないと言われる。ジェランクンもこの時間帯に行われることが多く、現地の人々にとって夕暮れ時は「霊に近づく時間」というイメージがある。霊を呼ぶこと・夕暮れ以降に行うことで、二重の意味で「ジェランクンは禁忌」という印象が強いのだろう。

 ジェランクンに使われる人形や呪文、筆記具などの要素は、人間と霊との境界に踏み込むための装置だ。サンデカラという「危険な」時間帯に行われることで、緊張感は否が応でも高められる。明るい時間に子供を帰宅させようという意図、人形と呪文で霊を召喚する方法、怖い体験談や映画の題材になっているなどの背景から、人々は霊的な世界にに近づきながらも一定の距離を取ってきたことがわかる。ジェランクンはウィジャーボードやコックリさんなどと同じように、世界中で使われてきた霊に触れるための一形式だ。人間は古くから霊的な世界との境界に強い好奇心を抱いていたのだろう。

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