ディビュークの箱

ディビュークの箱 ― eBayで売られた呪いの箱

 2001年、アメリカのオークションサイトeBayに一つの古びた木箱が出品されました。何の変哲もないワインキャビネットに見えたその箱は落札者たちを次々と奇妙な現象に巻き込み、いつしか「世界で最も呪われたアイテム」と呼ばれるように…。

ディビュークの箱

 ディビュークはユダヤの伝承に登場する悪霊です。「しがみつく」「離れない」を意味するヘブライ語の動詞ダーヴァク(דָּבַק/dāḇaq)、が由来で、安息を得られなかった死者の魂が生きている人間に憑依すると考えられてきました。

 問題の箱は、ホロコーストを生き延びたポーランド系ユダヤ人女性ハヴェラの遺品でした。2001年に彼女は103歳で亡くなり、その持ち物がオークションに出されたのです。箱を落札したのはアメリカ・オレゴン州の家具商ケヴィン・マニスでした。ハヴェラの孫娘はマニスにこう言ったそうです。「祖母は絶対にその箱を開けてはいけないと言っていた」。

次々と起こる怪奇現象

 開けるどころか箱を店に持ち帰っただけなのに、マニスの周辺で気味の悪いことが起こり始めます。店番をしていた従業員がパニック発作を起こし、店内の電球が次々に破裂。箱を母親にプレゼントしたところ、その日のうちに母親が脳卒中に。その後箱を引き取った友人たちも、悪夢や異臭、誰かに触られているような感覚を訴えたといいます。

 マニスは箱をeBayに出品しました。それを落札した大学生も次の落札者も同じ現象に悩まされ、箱の持ち主は次々に変わっていきました。

 最終的にミズーリ州の博物館ディレクター、ジェイソン・ハクストンが箱を手に入れました。彼は箱について徹底的に調査し、箱の中身も分析。中にはワイングラスの破片、ドライローズの花びら、髪の毛の束、そしてヘブライ語が刻まれた石板が入っていました。ちなみにハクストンは『The Dibbuk Box』という本まで出版しています。

ポスト・マローンの災難

 2018年、人気ラッパーのポスト・マローンがこの箱に触れたことが話題になりました。その後、彼は立て続けに不幸に見舞われます。自宅に強盗が入り、乗っていた飛行機のタイヤが離陸直後にパンクして緊急着陸、交通事故—。偶然の連続かそれとも呪いなのかはわかりませんが、ファンの間では「ディビュークの箱の呪い」と言われました。

箱の現在

 現在、ディビュークの箱はラスベガスにあるザック・バガンズのお化け博物館(Zak Bagans’ The Haunted Museum)に展示されています。この話を元にしたホラー映画『ポゼッション(The Possession)』が公開され、箱の存在は世界に知られることとなりました。2020年、バガンズは箱を開封することに決めます。その様子はテレビ番組『Ghost Adventures: Quarantine』で放送され、大きな反響を呼びました。

衝撃の告白

 ところが2021年、驚くべきニュースが飛び込んできます。最初の出品者ケヴィン・マニス本人が、オンラインマガジンのインタビューに応えたのです。

 「私はクリエイティブ・ライター。ディビュークの箱は私が創作した物語です」

 ホロコースト生存者の遺品という設定も、次々と起こる怪奇現象も、すべてマニスが書いたフィクションだったのです!彼は「リアルタイムで展開するインタラクティブ・ホラー」の実験だったと言っています。

 箱を手にした人々が体験した現象は何だったのでしょうか。集団ヒステリー?暗示の力?作り話だったはずの箱に本当に何かが取り憑いてしまった…? 答えは誰にもわかりません。ただ一つ確かなのは、この木箱が大きなオカルト都市伝説を生み出したということです。

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