“食べすぎ”の科学 脳・腸・ホルモンの視点から
「なんでこんなに食べちゃったんだろう」──そう思ったことは誰にでもあると思います。そしておそらく、その原因は「意志が弱いから」というだけではありません。
私たちの「食べすぎ」の背後には、脳の快楽回路、腸のホルモンシグナル、そして血糖値のジェットコースターのような上がり下がりが関連しています。神経心理学・栄養行動学・ホルモン研究の最新データを紐解くことで、「やめられない」食行動の背景を見つけることができるかもしれません。
ドーパミン報酬系が食欲を“強化学習”する
ハーバード大学の神経科学研究によると、高脂肪・高糖質な食べ物を摂取すると脳内のドーパミン報酬系(中脳辺縁系)が刺激され、「また食べたい」という感覚が記憶として刻まれやすくなるといいます。イェール大学の研究では、超加工食品は依存性物質と同じ神経反応を引き起こすことも明らかにされています。ポテトチップスやチョコレートに手が止まらないのも、実は脳の学習反応なのです。
グレリンとレプチン──空腹と満腹のホルモンが混線するとき
睡眠不足がグレリンという空腹ホルモンを増やし、レプチンという満腹感を伝えるホルモンを減少させることがわかっています。カリフォルニア大学のロバート・ラスティグによれば、加工食品の摂りすぎはレプチン抵抗性(レプチンが効かなくなる状態)を招き、体は満たされているのに脳は「まだ食べたい」と判断するようになるそうです。
血糖値スパイクが、脳を“もう一度”と誤作動させる
白米やパン、甘い飲み物など高GI食品を食べると血糖値は一気に上昇し、そして急降下します。この“落差”、いわゆる血糖値スパイクは身体にとって空腹や不安のサインとして感じられるので、また何かを口に入れたくなるのです。
スタンフォード大学の研究では、低GI食品とたんぱく質を朝食に取り入れた人のほうが、血糖値が安定しやすいという結果も出ています。
「食べすぎ」を引き起こしやすい食品たち
そして、食べすぎが起こりやすい食品には共通点があります。
- 高脂肪+高糖質の組み合わせ ドーナツ、フライドポテトなど
- 食感・風味を強調した加工食品 スナック菓子、フレーバー系
- 液体や超高速吸収の食品 清涼飲料水、シリアルバーなど
「摂取を止められないような食品」と言ってもいいかもしれません。
食べすぎのサイクルを切る、シンプルな方法
- 睡眠を整える ※7時間以上
- 食前に水を1杯飲む
- 食物繊維を毎食取り入れる ※豆、野菜、海藻など
- ながら食べを減らす
- 自分の食生活を記録して振り返る
食べすぎは意志の問題ではなく、複雑な生理的システムによって引き起こされています。その仕組みを知ることで、無理に我慢するのではなく、根本から改善するための道筋が見えてきます。
知識をもとに自分の食行動を見直すことで、習慣は徐々に変わっていきます。これは体重や健康だけでなく、日常の集中力や感情の安定にも確かな影響を与えるでしょう。まずは小さな行動から始めることで、長期的な健康へとつながっていくのです。