ゲマトリア

カバラの瞑想 神と繋がる文字と呼吸の実践

メルカーバーの幻視 Merkavah Mysticism

 ユダヤ教の神秘主義思想の流れで、紀元前後から中世にかけて行われた瞑想です。当時の修行の奥義にあたり、細部については準備のできた者以外には厳重な秘密となっていました。

 旧約聖書の「エゼキエル書」や旧約外典の「エチオピア語エノク書」に出てくる、メルカーバー(מרכבה、戦車)の玉座に乗る神を幻視するものです。観想法の一種ですが意識的にイメージを作らずに霊的なヴィジョンが現れるのを待ちます。夢見に近い方法だと言えます。

実践方法

 数日間の断食の後、両膝の間に頭を低く垂れた状態でトーラーや聖書などの言葉を唱え続けます。そうすることで恍惚状態に入り、ヴィジョンを見るのです。上記以外のヴィジョンとしては、まばゆい光の中を戦車が天へと上がっていくのを見ます。光が眼で見られないほど強くなり、最終的には自分自身も光そのものに溶け込みます。

セフィロトの観想 Sefirot Contemplation

 中世にはスペインを中心としてセフィロトの象徴体系に関する観想法が生まれました。代表的なものにモーゼス・デ・レオンの『ゾーハル』があります。

実践方法

 特定のセフィロトに焦点を当てて瞑想します。例えば中央に位置するティファレト(תפארת、美・調和)に焦点を当てた瞑想では「バランスと調和」を意識し、自分自身の中心を見つけるよう心がけます。ホクマ(חכמה、知恵)とビナー(בינה、理解)のセフィロトを繋ぐパスに焦点を当てれば、直感的な洞察力と分析的な思考を融合させることができます。

 瞑想を進めたときに訪れる心臓が熱くなるような感覚を「シェファ(שפע、聖なる流入)」と呼びます。この時に天使が現れて作業を助けてくれるヴィジョンを見ることも多いようです。

アブラハム・アブラフィアの文字瞑想 Abulafian Letter Meditation

 13世紀スペインのアブラハム・アブラフィア(1240-1291)は「預言カバラ」という独自の思想を創始した神秘家です。スペインのサラゴサに生まれ、若い頃は十字軍戦争で揺れる中近東を放浪し、スペイン帰国後はカバラを研究して幻視を得る瞑想に没頭しました。

 当時主流だったカバラが「セフィロト(生命の樹)」を重視したのに対し、アブラフィアは人間が預言を受け取る能力を重視しました。彼は自らの思想を「預言カバラ」と言いましたが、神の名の瞑想を重視したため「主の御名のカバラ」とも呼ばれました。

 アブラフィアの瞑想では「神の名を構成する文字とその置換・組み合わせ」が重視されます。これは「ツェルフ(צרוף、文字置換法)」と呼ばれ、彼自身は「ホクマス・ハ=ウェルーフ(חכמת הצירוף、結合の知恵)」と表現しました。この瞑想の目的は、文字をそれぞれの根源的な意味、神的な状態に戻すことです。それは純粋な思考が一切の感覚から離れて調和するもので、人間は文字を「使う」のではなく「受け入れる」存在になります。瞑想は「天の門」と「聖者の門(内なる門)」という2つの段階に分けられます。

天の門:初級段階
  • 天使としての観想:自分自身を天使として観想します。
  • 文字の学習:ヘブライ語のアルファベットや単語の構造、結合、創造について学びます。
  • 文字を数値として計算:ヘブライ語の22文字は、例えば「アレフ(א)=1」「ベート(ב)=2」のように文字でもあり数字でもあります。単語は数値に置き換えられ、同じ数値を持つ単語は同じ性質を持つと考えられました。
  • 文字の組み替え:アルファベットの逆綴り、音声系列の技法などを実習します。

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