古代エジプト秘教学校 𓉐𓋹 pr-ˁnḫ 後編 現代に受け継がれたもの
古代エジプト秘教学校 𓉐𓋹𓉐 pr-ˁnḫ 前編 知識と霊的世界の一体化
古代エジプト秘教学校 𓉐𓋹 pr-ˁnḫ 中編 秘儀のカリキュラム
後世への思想的な影響
古代エジプトの霊的世界観は、ナイルの地にとどまらずギリシャ哲学にも影響を与えたと考えられます。哲学界に大きな影響を与えたプラトンの「イデア(普遍的な真理の概念)」は、エジプトの「マアト(真理・秩序・正義)」と共通しています。どちらも自己を超えた宇宙全体の調和を目指し、必然的倫理や社会正義を内包する思想でした。プラトンは『ティマイオス』『クリティアス』でエジプト神官からアトランティスの話を聞いたと書いたことでも知られ、エジプト神官の元で学んだ時期があるんですよね。
秩序がすなわち真理であるという考え方は、ユダヤ教・キリスト教・イスラム世界における律法、シャリーア、礼節(アダーブ)に顕著です。ここでは法や礼節が自然の秩序と結びついていることが前提になっています。古代エジプト人にとって「正しく語り、正しく行うこと」は宇宙と調和する方法論だったと言えます。
ヘカの現在
では、エジプトで真摯に学ばれていたヘカはどうなったのでしょう。現代スピリチュアルでも古代エジプトは特別な場所だと考えられていますが、そこにはヘカの持つ力が影響していることは間違いありません。エジプトの魔術は今でもヘカと呼ばれ、その技法は受け継がれています。例えば現代日本なら、言葉をエネルギーを持つものだと考えるのは「言霊」、名前がエネルギーを持つという考え方なら「姓名判断」などに近いでしょう。古代エジプトの技法はアレクサンドリアから地中海を経て、医療・呪術・祈祷の技法として溶け込んでいきました。ヘカは「創造の始原から在る力」で、場所によっては神として祀られていたことがわかっています。宗教と魔術はまだ現代のように切り離されていなかったのです。
星と宇宙観
中編で書いたように、古代エジプト人にとって星々は神々がその姿を取ったもので、星空には宇宙の秩序が描かれていると理解されていました。ギリシャの思想だった十二宮と古代エジプトの神話と重なり、星々が描く地図はデンデラの天井に昇華しました。デンデラの黄道図は神殿儀礼のためのもの、生きている人間のためのものでした。宇宙の旅人たちは「星図の下に立って星に」なったのです。
現代では考えられませんが、ペル・アンクでは霊的な世界は体系的に「学べる」ものだと考えられていました。アラビア語で「教師(سباو/セバウ)は「星(سبا)」と同根…同様の観念を持った単語で、「導く者」という語源の由来までわかっています。古代エジプト人にとって「学ぶ」とは星の道を覚えることから始まるものだったのかもしれません。