アステカ族の戦士

『メキシコの神々』第一章・序論 1-1

※著作権の切れた書籍を翻訳・意訳して掲載しています。『The gods of Mexico』Lewis Spence 翻訳した文章©StellaCircus

メキシコ宗教の類型と発展

 もし古代メキシコの司祭の霊を呼び出して信仰について尋ねることができたとしても、本質的な意味を理解するためには質問を吟味しておかなければならないだろう。彼は儀式や神話、暦のことは詳しく話してくれるかもしれないが、信仰の根本的な動機となると自分でも説明できない可能性がある。彼にとって「宗教」という概念は存在せず、政治や軍事、農業、芸術と一体化していたからだ。

 そして、彼は魔術や科学と信仰を区別しなかっただろう。信仰の本質について問い詰めたら、彼はこう答えたかもしれない。「我々が神々を崇拝し、血を捧げ、贈り物で喜ばせなかったら、神々は我々を見放し、雨を降らせず、作物も実らなかっただろう」と。この答えこそがメキシコにおける信仰の核心で、これを基礎として多様な儀式や道徳、伝統が築かれたのだ。

 宗教について述べるとき、一般的にはその信仰を持つ民族の歴史や文化に関してある程度知識があることが前提となる。だがメキシコの古代史は長らく不明瞭だったため、宗教を語る以前に民族や土地についての説明が必須だった。最近になって研究が進んで状況が変わったので、ここでは簡潔な説明にとどめることにする。

ナワ民族とその背景

 本書で扱うのはコロンブス以前のメキシコに住んでいたナワ族で、現在も存在する。ユト・アステカ語族に分類されるナワトル語(ナワトラトリ「規律ある者の言葉」)が使われている。1519年にスペインが侵攻したとき、メキシコの北回帰線からテワンテペク地峡までを支配していたのがナワ族だ。

 ナワ族の起源には諸説あるが、北方から移住してきたことは確実だ。一部の研究者はブリティッシュコロンビア周辺から来たのではないかと考えている。最初のナワ族は8世紀頃にメキシコ盆地へ移住したとされるが、後続のアステカ族は13世紀半ばになってようやく到達し、1376年頃にメキシコ・テノチティトランを建設した。

 当初アステカ族は狩猟を生業とする遊牧民で、北米のインディアン部族のように移動しながら狩りをしていた。しかしその優れた戦闘力で、すでに500年以上の伝統があったアナワク高原の文明を急速に吸収し、わずか125年ほどの間に驚くべき発展を遂げることになる。この地に定住したアステカ族は周辺民族との戦いを繰り広げ、最終的にはすべてを征服した。

支配下の諸民族

 アステカ族が支配した諸民族は多く、特に以下の民族が挙げられる。

北部:狩猟民族のチチメカ族と、独自の言語を持つ半未開民族のオトミ族
西部:人種的な起源が不明なタラスカ族
南部(バルサス川以南):オトミ族に近いミシュテカ族とサポテカ族(比較的文明化していた)
東海岸:マヤ系のワステカ族とトトナカ族
南東部:より古い起源を持つオルメカ族、シカランカ族、ノノアルカ族
テワンテペク地峡以南:高度な文明を持つマヤ族

 マヤ民族の起源については諸説あるが、本書では深掘りしない。

『メキシコの神々』ルイス・スペンス 序章

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