スーフィーと古代エジプトの秘儀 神秘主義の深淵
スーフィズムとは何か?
スーフィズムはイスラム神秘主義とも呼ばれ、神との合一や深い精神的体験を目指すものだ。その歴史の中で、スーフィー聖者たちによる奇跡や神秘体験も数多く記録されている。カラーマートと呼ばれる奇跡にはテレポーテーションや未来予知などがあり、精神的な修行を積んだ者が到達する境地の象徴とされている。
スーフィーたちは単なる宗教家ではなく、宇宙の真理を探求する秘教の継承者という側面を持つ。彼らの教えには、古代エジプトのヘカ(魔術)や霊的な世界と共通する要素が見られる。スーフィズムを理解しようとすることは、古代神秘思想を探ることにもつながるのではないだろうか。
古代エジプトとスーフィズム
スーフィズムは神秘主義の名の通り、霊的な修行や詩、セマーや旋回舞踏を通じて神と一体になることを目指している。「愛と神秘の求道者」として知られるが、謎めいたイメージを持つ人も多い。スーフィーの教えには「神との合一(ファナー)」や「叡智(イルファーン)」といった概念があり、古代エジプトの信仰と共通している。
古代エジプトでは、死後の世界の試練を乗り越えて神との合一が成されると考えられていた。オシリス神話では、オシリスがイシスの助けによって死を超えて復活することで神聖な存在となる。この「死と再生」「神との合一」という概念は、スーフィズムでの「ファナー(自己消滅)」に通じるものがある。スーフィーたちが目指す「ファナー」は現世における自己消滅=神との合一、忘我の境地を指す。古代エジプトでもスーフィズムでも、存在の根源は「無」だという点も共通している。
古代エジプトの神官たちは、神聖な言葉を唱えることで霊的な力が生まれると考えていた。一方、スーフィーたちは神の名を唱える「ズィクル」で精神を浄め、神との一体感を深めていく。どちらも「比喩や象徴」を使った詩の形式で教えを伝えており、スーフィー詩人として有名なルーミーの著作もこれに当たる。スーフィーの中には「隠された知識(アル=イルム)」を受け継いだ者がいると言われるが、古代エジプトの秘教的知識は詩として受け継がれてきたのかもしれない。
現代エジプトのタリーカ(スーフィー教団)
エジプトにはいくつかのタリーカ(スーフィー教団)があり、それぞれ独自の修行法やとカラーマートが伝えられている。
シャーズィリーヤ
ズィクルや瞑想を重視している。一定期間世俗と離れた孤独な瞑想を行って精神の浄化を図る。ある伝説では、創始者のアブール・ハサン・アッ=シャーズィリーが、一瞬にして二つの異なる場所に現れたという伝承がある。
バダウィーヤ
創始者のアフマド・アル=バダウィーの聖誕祭(ムッラド・サイイド・アル=バダウィー)では、ズィクルや詩の朗読を行う。貧困層への支援など、熱心な社会奉仕を行っている。バダウィーは、信者を一目見ただけでその人の過去と未来を見通す能力を持っていたという。
リファーイーヤ
集団で声を出して行う激しいズィクルで霊的な高揚をもたらす。信者たちは剣や火を用いた儀式を行うが、傷を負うことはないとされる。身体を傷つけても無傷であるという奇跡が伝えられている。
スーフィズムは現代でいえばメタフィジックスだが、自分を消滅させるほどの深い洞察と激しい修行が伴っている。古代エジプトから繋がる神秘思想の一端を担っているのは確実だろう。スーフィズムを実践することで奇跡的なことが起きても、奇跡を起こすようになった人間にとってはもはや大きな意味を持たない。古代から続いてきた「真理の探求」、それ自体が真理なのではないだろうか。