《中国怪談地図》広州 黄昏に揺れる街の記憶
南シナ海に面し、古くから貿易港として栄えてきた広州。広東語と潮州語が飛び交い、古い寺院と市場がひしめく旧市街。その先には高層ビル群と繁華街が広がり、新旧混ざり合う独特の街になっています。風水の本場ともいえる広州にも、怪談や都市伝説がありました。観光では見えない広州を覗いてみましょう。
鬼門に建った団地
広州市内のある再開発地区には、「鬼門」の方角に建つ古い団地があります。この団地には人が居着かず、住み続けると病気になると言われています。地元の老人によれば、この団地はかつての処刑場跡に建っていて、工事中に人骨も出たのだそうです。開発前には風水師が呼ばれて方位をずらすべきだと提案したものの、コストの関係で却下されたといいます。
鏡に現れる女
この団地のエレベーターホールには大きな姿見がかけられています。この鏡を一人で夜中に見ると、背後に長い髪の女が立っているという話が出ています。
「誰かが後ろに立っていたので振り返ったら誰もいなかった」
「鏡に映った女と目が合うと耳元で名前を呼ばれる」
この団地での体験談は、繰り返しSNSで話題になっています。管理組合も噂に困って鏡を撤去しようとしたのですが、工事前日に作業員が原因不明の発熱で入院、そのまま中止になったのだとか。広州では、風水は建築や都市計画に深く関わっています。門の向きから窓の配置、庭の形に至るまでが吉凶を左右すると信じられていて、方角や地形を無視した建築は怪談の温床になることも少なくありません。
【海珠橋 水面に映る女の影】
パールリバー(珠江)に架かる海珠橋は、戦時中日本軍によって爆破され、国民政府撤退時にも損害を受けた歴史のある橋です。現在は交通の要所ですが、夜になると「何かが出る」という噂が尽きません。
2009年、夜遅くに欄干に立つ女性が撮影・報道され、自殺未遂として広く話題になりました。それをきっかけに、白い服の女を見たという体験談や、乗せたはずの女性客が忽然と消えたというタクシー運転手の証言などが語られ始めました。
「夜中に海珠橋を通ったら白い影が見えた。近づいたら消えたけど、呼吸が止まるかと思った」
「タクシー運転手の話なんだけど、女の客を乗せたはずなのに、振り返ったら誰も座ってなかったって…」
「1人で橋を渡ったら急に冷気が吹きつけて、ずっと後ろから誰かに見られてるみたいだった」
この当時は実際に海珠橋からの飛び込みが多く、当局は対応に追われていました。現地では今でも「あそこには何かがある」というイメージがあるようです。歴史の記憶が染みついた場所なのかもしれませんね。
【白雲山 帰らぬ登山者】
広州市の北に位置する白雲山は、広州の肺と呼ばれるほど緑が豊かな場所です。市民の憩いの場として親しまれる山ですが、午後3時を過ぎて登ると…戻ってこられないという噂があります。
数年前、「午後3時過ぎ、山で誰かの気配を感じた」という投稿が発端となり、「人の後ろ姿を見たはずなのに、振り返ったら消えていた」「誰もいないのに音が聞こえてきた」などの書込みが相次ぎました。山頂付近にある能仁寺という古刹では、雨の夜に誰もいないのに鐘が鳴り、住職は「自分以外に鐘に触れないことになっている」と話したそうです。また雨上がりの夕方に寺の裏手を通りかかった地元のガイドは、子供の泣き声のような音を聞いたといいます。雨が何かの媒介となっているのかもしれませんね…。
【蛇の目を持つ子供】
広州市郊外のある村には、蛇の目を持つ子が生まれたという話があります。目は赤く縦に裂けていて、人の心を読んだとも言われています。1970年代の話なのでそれほど昔ではありませんが、村の人々はその子の名前を語らず、写真も記録も残されていません。子供がその後どうなったのかはわからず、消息不明となっているのですが…。その当時、村では鶏や犬、ヤギなどの動物が次々と姿を消し、「蛇神の怒り」だと考えて廟を丁寧に祀るようになったといいます。
処刑場跡地に建つ団地、橋の欄干、山の古刹に現れる「何か」。私たちが広州を歩くとき、視界の端に何かがふと揺れるようなことがあるかもしれません。