昭和の教室

その消しゴムは貸せない! 昭和の教室に広がったおまじない 

 今では少なくなってしまった木の床に広げたワックス、教室の後ろで飼われている蚕のごはんの桑の葉の匂い…。昭和の学校を思い出すと、あの頃独特の湿度を思い出さずにはいられない。そんな時代の教室では、いろいろなおまじないが流行していた。小さな恋を叶えるため、テストでいい成績を取るため、願いはいろいろあったけれど、かなりの数の子供がこっそりおまじないをしていたと思う。誰かが仕入れてきたおまじないは、いつの間にか教室中に広がるものだった。

 当時大人気だった消しゴムのおまじないは小学生女子たちがこぞってやっていた象徴みたいなものだ。消しゴムに好きな子の名前を書いて、誰にも触られずに自分だけで使い切れば両想いになれる。誰かに消しゴムを貸してと言われた子が「ごめん貸せない!」と断るのも日常茶飯事で、「なるほどあのおまじないか」と周囲に丸わかり。でも筆箱にしまわれた小さな消しゴムには、その子の本気の願いが託されていた。好きな子の名前を書いただけで満足しちゃうようなところもあったと思う。

 それよりオカルト度が高かったのが、家でやる鏡のおまじないだ。夜中の0時に三面鏡や水を貼った風呂桶を覗くと将来の結婚相手の顔が映る。昭和の家にはかなりの確率で三面鏡があったが、母親世代の結婚道具として主流だったからだ。少し歪んでたりすると、夜中ふいに見たときにけっこう怖くなったりする。三面鏡は当時のホラー漫画にもよく出てきて、血まみれの男が映ったとか知らない人が後ろに立っていたとか、妙に具体的で怖い話になっていた。子供の想像力は豊かだから、漫画を見た夜は三面鏡のカバーをかけ直したりして。

 結局のところ、昭和のおまじないは「信じた時間そのもの」を楽しんでいたんだと思う。教室の匂い、体育の時かっこよかったあの子の姿、筆箱の中で大切にされる消しゴム、三面鏡をのぞき込む瞬間の空気-感覚のすべてがおまじないという儀式をリアルな体験にしていた。今思い出すと幼くてかわいくて少し笑ってしまうような思い出なのに、あの頃は少しの勇気と小さな秘密でできた小さな世界だった。あなたは今でもシャーペンの芯を折らずに好きな人と自分の名前を書いたハートマーク、塗りつぶせますか?

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