蜂毒
「顔がね、巣になっていたんですよ、蜂の!恐ろしいですね。蜂が巣を作るってすごく時間がかかるんですよ、一体どれだけの蜂が群れたんでしょう。怖かったでしょうね、きっと痛かったでしょうね」
Aさんの瞳をまともに見ることができなかった。聞きたいことはあったが聞くべきではないと直感で感じていた。
Aさんは私の様子に気づき「不謹慎ですね。よしましょう」とお茶をすすった。帰り際手土産に蜂蜜の詰め合わせを持たせてくれた。Aさんの蜂蜜はとても高級なものだ。礼を言って草履を履いたとき、Aさんはポツリと呟いた。
「女王バチは我が子を殺めた生き物を必ず探し出して殺めるんですよ」
ぎくりとして顔を見返すと「幼虫には毒嚢のもとになる器官があるんです。それを気が遠くなるような量を集めると・・・」これ以上聞けないと挨拶もそこそこに飛び出した。
後日振り込まれた冥加金があまりにも大金だったのでお返ししようとAさんを訪ねると、瀟洒な豪邸にはひと気がなかった。それ以来Aさんを見たものはいない。
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