ムナイ・キ──歪められた形を見つめ直す (前) アンデスの秘儀とは?
日本で初めてムナイ・キが紹介されたのは、2010年代半ばだ。その教えを紹介したのは「ケルトのシャーマン」という女性で、日本でクラスが開講された当時のインタビュー記事が残っている。その2013年の記事で、もうすでに本来のムナイ・キとは明らかなズレがあった。看過できない大きな違い、明らかな誤りは主に三つだ。
「インカの長老と暮らし、秘儀を授けられた人物のみが伝える許可を受けた」
ムナイ・キという儀式自体が存在しない。またムナイ・キをケチュア語で”I love you” または “Be as thou art” (あるがままで)と説明したサイトがよくあるが、創始者が明確に「munay(愛、愛する=アガペー的な愛)」というケチュア語と「日本語の”気”、中国語の”气”を合わせた」と言っている。ケチュア語(少なくともケロ族が住むクスコ方言では)に-kiという接尾辞はなく、文法的に正しい”I love you”は”Munakuyki”か”Kuyayki”、”Be as thou art”なら”Kaylla kanki”になる。
ChatGPTに”Munay-ki”を”Be as thou art”と書いている最古のサイトを探してもらったところ、シャーマンとして活動している女性のサイト(archive.orgで2011年)が見つかった。シェイクスピアのソネットに”Be wise as thou art cruel”とあるが、いわゆる古典英語は英語圏では威厳を持って聞こえるようだ。
「人類がシベリアからベーリング海峡を越えてインカの地へ辿り着いた時代から3万年に渡って受け継がれた」
であればなぜほかの地域では受け継がれていないのか。という意地悪な言い方をしなくても、そもそもアルベルトが作ったので受け継がれてきた期間は「15,6年」だ。また「自分に伝授した師匠の師匠の師匠が創始者」のような記載があったりするが、それではアルベルトが3万年前から生きていることになってしまう。この「~の師匠が創始者」と「3万年」を同時に記載していたら、この大きな矛盾についてその人が気づいていないことになる。
「2日間のワークショップで全ての儀式を受け取った方は、他者に伝授できるようになります」
創設者のクラスでは「渡せるものは種であって、それを育てるか否かは受け取った人間次第」と教わる。つまり儀式や伝授を受け取っただけで変化したり、できるようになったりはしない。実際マルセラのクラスでは申し込んだ(お金を払った)全員に修了証を出すわけではなく、参加した上でレポートのようなものを書いて申告する必要があった。
ケロの教えでも同様に、ひとつの課程を終えたら次に進むまでには日々の練習・実践が必要だと何度も言われた。今私はinca pacoもしくはnusta pacoという本当に入門の段階を名乗ることを許されているが、次の段階には最低でも1年が必要だ。しかも1年経ったら自動的にApu-聖なる山に行って儀式を受けられるわけではなく、サインを受け取っている必要がある。