幾何学のトンネル

繋がりを取り戻すための二極(前)─神秘思想と「感覚」との繋がり

 ふとしたはずみに「この感覚、前にもあった気がする」と思ったことはありませんか? 知らない街を旅しているはずなのに見覚えがあったり、夢の中で誰かと話したり、話している相手の感情が手に取るようにわかったり…。私たちは「自分が経験しているひとつの現実」の中にいるのではなく、重なり合った複数のレイヤーに同時に存在しているのかもしれません。

 その感覚を言葉にしようとしても、どう表現していいのか難しいですよね。「スピリチュアル」「チャクラ」、そして「エネルギー」… 自分の体験に近い言葉ではあっても、惜しいところを掠っている感覚があるのではないでしょうか。この「自分の体験した感覚と言葉のずれ」を、多くの神秘家たちが説明しようとしてきました。彼らが残した「意識のマップ」にはどんなものがあるのでしょうか。そして、私たち人間はどうやって「繋がり」を取り戻せるのでしょうか。

 アリス・ベイリーは「人間の魂の性質には宇宙の構造が反映されている」という、七つの光線という概念を伝えました。彼女は光の角度や色を通じて、精神を貫く軸を描いています。七つの光線はかつて私たちの「存在」に深く関わっていたとされましたが、今となってはその影響がどのようなものだったのか見えにくくなっています。瞑想や思念を調整する方法はそれらの光線と再びつながる手段で、自らの魂の由来を思い出そうとするときの手がかりでもありました。

 『フラワー・オブ・ライフ』で知られるドランヴァロ・メルキゼデクは、神聖幾何学を使った手法を教えています。マカバ(メルカバ)は単なる立体図形ではなく、人間によって起動するエネルギー体です。ドランヴァロは「古代人類はマカバという光の身体を使っていたが、その能力は今では失われている」と説きました。彼は光の身体を再活性化するため、呼吸法・幾何学の図形・視覚化・イメージを使う方法論を提示しました。幾何学図形を心に描くというより、図形そのものと一体化する演習だったと言えます。

 OSHO(ラジニーシ)はすべての形式を疑い、それを破壊することでしか届かない真実があると言いました。「マントラも、図像も、教え自体も、全てはどこかの瞬間で捨て去られる必要がある」。その瞑想は「削ぎ落とす過程」でした。かつて人間はもっと自然に、直接的に世界とつながっていたのに、現代では言葉や知識、信念がそれを妨げている… そのため一度全ての「かたち」を壊し、意識の底に残った「何もない場所」からつながり直したのです。

 ルドルフ・シュタイナーは、古代の秘儀参入者たちに見られる「宇宙と人間の霊的相似」を現代に蘇らせる方法論を構築しました。ここで重要なのは「人間の内側に宇宙が反映されている」という理解を、思考・感情・意志の各レベルで腑に落とすことです。イマジネーション(Imagination、霊的映像)、インスピレーション(Inspiration、宇宙の言語)、インテュイション(Intuition、存在との合一)という霊的知覚の訓練体系があり、魂のそれぞれの段階を超えるための手法となっていました。こちらもまた、忘れられた古代の記憶を意識を使って呼び戻そうとするものでした。

 こういった神秘家たちの方法論は、「感覚の更新」を目指す点で共通しています。読めないままになっていた地図を、それぞれの方法論で再び読めるようにしようとしたのです。必要なのは情報の多さではなく、感覚に火をつける配置でした。知識だけでは絶対に届かない無意識的な領域に眠っている記憶、かつて「世界」とつながっていた当時そのままの感覚をどう呼び覚ませるか、神秘家たちはその一生をかけて追求していました。

 しかし、神秘家たちが「失われたもの」と考えていた霊的な繋がりは、ある地域では失われたことすらありませんでした。後編では、世界とともに在り続けた側面、シャーマニズムに目を向けてみたいと思います。

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