本気で恐ろしい拷問シリーズ スカフィズム
調べるのがきつくて数か月空いてしまった『本気で恐ろしい拷問シリーズ』、今回は虫と蜜の地獄ことスカフィズム。毎回書くたびに「この拷問はエグさで言えばかなり上位」と思うのだが、今回も今までのエグさを更新してきた。このスカフィズムは古代ペルシャの刑罰だが、処刑法というより人間を生餌にした儀式と言った方がいいかもしれない。人間の発想はどこまで残酷になれるのか…。
罪人は舟の板に挟まれるか樽に入れられ、顔や手足だけを外に出した状態で固定。体には蜜や牛乳が塗りつけられ、口には甘いものを詰め込まれる。そのまま直射日光にさらされた体は汗と蜜が混じり合って甘い香りを放ち、腹が壊れる。やがて虫たちがやってくる…蜂やアリ、蛆やハエ。自然界の小さな捕食者たちは、思わぬ御馳走とばかりにその身体を食い荒らしていく。
長い日数をかけ、虫やカビ、腐敗がゆっくりと身体を蝕む。死はあまりにも遠く、痛みと不快感に縛り付けられる意識。処刑人が刃を振るう必要もなく、自然そのものが拷問の道具となるのだ。歴史家プルタルコスはアケメネス朝の反乱兵士ミトリダテスの処刑について書いたが、彼は17日間に渡って苦しんだという。
だが、実際にこのスカフィズムが行われたかどうかは疑わしいようだ。プルタルコスが参照したと考えられる記録が空想的かつ大げさな文章で知られるギリシャの医師クテシアス(処刑を行ったとされるアルタクセルクセス2世の医師だった)によるものだからだ。
とはいえ、この拷問が想像されたという事実だけでも充分恐ろしい。串刺しや八つ裂きといったパワー押しの残酷さとは異なり、スカフィズムには「人間が手を下すことすらしない」という残酷さがある。自然の中を生きる虫たちを利用して、同じ人間の尊厳を奪い破壊する…神すらも辱める行為ではないだろうか。拷問とは肉体を壊し命を奪うだけでなく、人間の常識や倫理感を暴く鏡なのかもしれない。