ヤング・ベッキー by.アーサー・ラッカム

本気で恐ろしい拷問シリーズ ネズミ

アーサー・ラッカム, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で

 古今東西数々の拷問が考案されてきたが、今回の拷問はエグさで言ったらかなり上位に来るのではないかと思う。特別な器具?使いません。大がかりな装置?要りません。使うのはネズミを入れる檻と、使いたければ拷問される人間を寝かせるテーブル、それだけだ。ネズミの歯と顎は強く、人間の肉だけでなく骨まで噛み砕くことができる。

 古代ローマから中世のロンドン、 20 世紀の南米に至るまで、ネズミを使ったさまざま拷問は世界中で行われてきた。自分たちのごく身近でチーズを食べているイメージのネズミは、かなり恐ろしい拷問方法で陰惨な歴史を刻んだ動物なのだ。

 この拷問のルーツがどこにあっていつ始まったのかは正確にはわからないが、少なくとも60年前後のローマ帝国で行われていたのは確実だ。ネロ皇帝が敵に鉄槌を下すために使ったことがわかっている。

 中世のロンドンでは、かのロンドン塔にネズミの拷問用の地下牢があったという。水位が低い干潮時に囚人は牢に投げ込まれる。テムズ川より低い位置にあるこの牢屋は、時間と共に水位が上がっていく。すると川の流れと共にネズミが牢に入ってきて、囚人の体から肉を囓り取るのだ。囚人は日の差さない暗闇の中で、何が起きているのかもわからないまま痛みに悲鳴を上げる…。

 囚人に対してのネズミを使った拷問はインドでも行われた。ズボンの足首を縛られた中にネズミが放り込まれ、そこから逃げようとしたネズミが囚人の体を傷つける。ここまでやるわけではないが、最近でもシリアの刑務所では房にいたネズミたちが飢えて囚人の体を食べたという。囚人たちはネズミに喰われないよう、食事を分け与えていたそうだ。刑務所と囚人、そしてネズミは切っても切れないようだ。 

 だが、さらに残酷なのはオランダの独立戦争の時期に行われていた拷問だろう。オランダの指導者がスペイン側の敵から情報を得るために考案されたものだ。拷問を受ける人間の腹の上には、ネズミが入った底のない小さな檻が置かれる。檻の上には石炭が置かれ、徐々に金属の檻が熱されていく。その熱から逃げようともがくネズミが唯一逃れる先は…犠牲者の腹の中になる。潜り込んだネズミは腸を傷つけ、耐え難い苦痛をもたらす。

 この方法は効果的だったようで、何が行われるか察した男たちは、石炭が乗せられる前に洗いざらい情報を話したという。あまりにも効果があったこの方法は世界に広がり、ピノチェト独裁政権下のチリやアルゼンチンの軍事政権では直接直腸や膣にネズミを送り込む仕組みが考案されたという。

 『本気で恐ろしい拷問シリーズ ワニの餌食』も同じ「喰われる」だが、ネズミは体が小さいだけに致命傷までの時間が長く、より苦痛が長引いたのではないだろうか。ワニならあきらめもつくが、ネズミだったらワンチャン生き残れるような気がしてしまうというか…。そういう意味では、「処刑」ではなく「拷問」としてはある意味優秀だったのかもしれない。

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