老子

365日 光と闇の暦 3月9日 道を説く者、法を説く者 老子と韓非子

聖フランチェスカ・ロマーナの日
今日の光の神:老子(道家・無為自然の思想家)

 老子(老子/Lǎozǐ, 紀元前6世紀頃?)は、道家思想の祖とされる伝説的な人物です。周王朝の書庫の管理官とも架空の存在だったとも言われます。老子が書いたとされる『道徳経』は中国思想史の中で強い影響力を持った文献の一つです。思想の核にあるのは「道(タオ)」で、この言葉は万物の根源かつ自然の法則そのものを指します。老子は「道の道とすべきは、常の道に非ず」、真理を定義しようとした瞬間にそこから離れてしまうという逆説を提示しました。水のように低い方に自然に流れることで、結果的にすべてを成し遂げる無為自然の境地を説いています。

今日の闇の神:韓非子(法家・冷徹なる法の実践者)

 韓非子(韓非子/Hán Fēizǐ, 紀元前280頃-233)は、法家思想を完成させた思想家です。韓の王族として生まれましたが、吃音のために弁論が不得意だったために思想を文章にしました。その著作を最も高く評価したのは、敵国・秦の王(後の始皇帝)です。韓非子は韓の使者として秦を訪れますが同門だった李斯の計略によって投獄され、最終的には服毒による自決に追い込まれました。韓非子の思想は非常に冷徹です。「人間の本性は利己的で、道徳による統治など幻想に過ぎない。国家の秩序は法と刑罰、厳格な信賞必罰によってのみ維持できる」いうのが彼の主張でした。

光と闇

 老子と韓非子の対比は「理想と現実」の境界を問いかけます。人間社会に対して向けた両者の視線は、どちらも決して楽観的なものではありませんでした。しかし、その観察から導き出した答えは正反対です。老子は社会に溢れる「作為」こそが不和の根源だと考え、解決のために余計なものを削ぎ落とす「引き算」が必要だと考えました。韓非子は人間の欲望を前提とした上で、精密な法体系という「足し算」によって社会を安定させようと考えました。一方は自然へ、もう一方はシステムへと、救いの形を求めたのです。

この日のテーマ 足すか、引くか

 解決の手段としての足し算と引き算—。老子は社会をより単純な形にすることを提唱し、韓非子は厳格な規律をさらに増やすことで秩序を保つべきだと主張しました。目の前に複雑な課題が立ちはだかったとき、あなたはどちらの道を選ぶでしょうか。不自然な作為を減らして本質へ近づくのか、それとも新たな仕組みを構築して状況を統制するのか。問題を解きほぐそうとするなら、どちらがその時の自分に平穏をもたらすのかを考える余地があります。現状を変えるために必要なのは「排除」なのか「補強」なのか、その選択にはその時の自分が反映されるのかもしれません。

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