オーパーツ大好き!水晶ドクロ
今回は「水晶ドクロ」をご紹介したいと思います。クリスタル・スカルとも呼ばれるこのオーパーツ、透明な水晶を精巧に彫り上げた人間の頭蓋骨で、オーパーツの代表格として世界中の人々を魅了してきました。マヤ文明やアステカ文明の遺物とされ、「世界に13個存在し、すべてが揃ったとき人類の叡智の扉が開かれる」という伝説まで生まれています。2008年には映画『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』の題材にもなりました。
最も有名なのが「ヘッジス・スカル」と呼ばれるものです。イギリス人冒険家の養女アンナ・ミッチェル=ヘッジスが1924年、中央アメリカのベリーズにあるマヤ遺跡ルバアントゥンで発見したとされています。等身大の頭蓋骨が一塊の水晶から彫り出されていて、下顎は取り外し可能。内部にはレンズとプリズムの効果が組み込まれていて、目を覗き込むと催眠状態に陥るとも、太陽光を当てると虹色に輝くとも言われていました。
1970年代にヒューレット・パッカード社の研究所が調査したところ、「道具による加工痕がなく、手作業で作るには300年以上かかる」という結果が出て、これが「オーパーツ」としての評価を決定づけることになったんです。古代の人々がどうやってこんな精巧なものを作ったのか、謎が謎を呼ぶ展開ですよね。
しかし…。2008年、スミソニアン博物館の人類学者ジェーン・ウォルシュが走査型電子顕微鏡で分析した結果、ダイヤモンドでコーティングされた高速回転工具の痕跡が発見されてしまいました。これは明らかに近代の技術です。さらに決定的だったのは、アンナの父親が1943年にロンドンのサザビーズで約400ポンドで購入していた記録が見つかったこと。遺跡での発見という話は、全部作り話だったんですね…。
では誰がこれらを作ったのか。鍵を握るのがフランス人骨董商ウジェーヌ・ボバンという人物です。1860年代からメキシコシティで活動し、「皇帝の骨董商」を自称していたボバンは、1881年にパリで大型水晶ドクロを売り出しました。最初は「雑多な品物」として売っていたのですが買い手がつかず、「ベラクルスで発掘されたアステカの遺物」と偽ってメキシコ国立博物館に売り込んだところ、学芸員に偽物と見破られてニューヨークに逃亡。最終的にティファニー経由で大英博物館に売却されました。なかなかの山師ですよね。
ボバンの水晶ドクロの出所は、ドイツのイーダー=オーバーシュタインという町でした。この小さな町は15世紀から宝石加工で知られていて、19世紀にはブラジル産水晶を輸入して世界の宝石の80%を加工する一大中心地になっていたんです。大英博物館の調査でも、ドクロに含まれる緑泥石内包物がブラジルとマダガスカル産水晶の特徴であることが確認されています。先コロンブス期のメソアメリカでは入手不可能な原材料だったわけですね。
現在、科学的調査を受けた水晶ドクロはすべて近代の製品と判明しています。大英博物館のドクロは「おそらくヨーロッパ製、19世紀」と分類され、スミソニアンのドクロは「近代の偽物」として展示されています。夢もロマンもあったもんじゃありませんよね!
それでも水晶ドクロへの関心は衰えていません。ニューエイジの信奉者たちは今も超自然的な力を信じていますし、アンナの夫は「愛のドクロ」と改名してその遺産を継承しています。科学的にはオーパーツではないと結論が出ていますが、19世紀の骨董詐欺と人間の想像力が生んだ「もう一つのオーパーツ」として、私たちに色々なことを教えてくれる存在なのかも知れませんね。
それでは今回はこの辺で。